とある悲恋好き 2020-11-26 23:20:11 |
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それは……
(相手の相槌が耳に届けば、様子を伺う様に顰めた面立ちで徐に振り向くが、続けられた素朴で端的乍ら鋭い指摘に上手い言い訳も思い付かず、咄嗟に二の句を継げ無くなって瞳孔を丸くして押し黙り。薄寂しく不気味なバラック小屋の前、穏やかに月灯りが射す中で暫しの静寂が場を支配した。聞こえて来るものとすれば何時の間にか雲を退かしたであろう風の名残り歌位で……其の重たく沈黙した空気と何を思ってか口を噤んだ儘此方を見詰めてくる相手の視線に耐え兼ね再び顔を逸らせば次の瞬間には右手を掴まれて。予期せぬ出来事に大層驚いたが寧ろ其の為に何か言葉を発する時分を逃し、漸く「え……おい、ちょっと……待てよ、何処に連れて行く気だ……!」と稍震えた声音で抗議めいた科白を紡げた頃合いには既に歩き始めてから数分が経過しており。振り払おうとすれば可能だったのかも知れないが意表を突かれた事に依る動揺と何処と無く相手から感じる凛とした気迫に押され、結局其の儘見知らぬアパートの一室に辿り着き。中に招き入れられても寸刻の間は惚けた様に其の場に立ち竦んでいたが軈て室内に電灯の明かりが満ちると何れ程久しく浴びていなかったかも定かではない白い光の眩しさに思わず片手で自身の目元を庇い、然し分陰で其れに瞳が慣れれば次は視界に移った景色に瞬時に心を奪われて。何だこの部屋は……本だらけだ。其れも読んでみたいと思っていた作家名から表題が一通り揃っており初めて見る背表紙も興味を惹かれるものばかりで。夢でも見ているのだろうか、先程迄平常通りに仄暗く冷たい風の抜けて往く夜闇の中に居た筈なのに。……其の様なことを考えて絶句していれば、相手は柔らかそうな座布団を勧めた上で更に一冊の文庫本を差し出してきて。高圧的な雰囲気は微塵も感じられ無いのにも関わらず暖気を漂わせつつも有無を言わさぬ様な奇妙な勢いに押され、つい受け取ってしまったが夢見心地は尚も変わらず、手にした書籍の表紙を眺めながら呆気に取られていると、不意に相手が腕を上げた為反射的に殴られるのではないかと身を竦めそうになったが、次の刹那相手の手は優しく自身の頭を撫でたのみであり。愈々何が起こっているのか分からなくなっては、流れる様に自然な素振りで台所に立った相手の背に向け、自身も勧められた座布団には座れぬ儘、其れでも手渡された本を投げ出す様なことは出来ず寧ろ無意識の内に本を持つ片手の力を強め、持て余した困惑故に口調は幾らか荒く拙い言葉選び乍ら真っ直ぐに疑問をぶつけて)
いや……あんた、一体どういうつもりだよ!
(/いいえー、常々一週間は無言でもお待ちしますよー。それ以上になると以降の返信は保証できかねますが^^; ロルについてはこちらとしては、互いにそう気負わず、楽しくやり取りできたらいいかなぐらいの感覚で回しています笑 夏目漱石がお好きとは渋いですね笑 日本の近代文学の祖ですね)
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