とある悲恋好き 2020-11-26 23:20:11 |
通報 |
( …………遠い昔、夜空を閉じ込めた様な石があると誰かが教えてくれた。男性だった筈だが、其れが父親だったのか、其れとも歳の離れた兄だったのか、現在と為っては不鮮明で既に確かめる術も失っており。然し目の前に開かれた児童書と頁を留める大きな手、其れから腰を預けた胡座の暖かさは今も覚えていて。……最近 "無月" という言葉を知った。何でも雨や曇りの日に想像で嗜む雲上の月こそが、眼に見える月よりも美しく風雅と云うことらしい。軒先で古紙回収車の迎えを待っていた雑誌の束を闇から拐った処、其の中に在った俳句の季刊紙に綴られていた知識だが、今の様に鉛色の雲が低く垂れ込める夜には似合う言葉だろう。そして其れが事実なら、あんなに些細な場面が特別だった様に思えるのも其れが陽溜まりの中の記憶で、二度と取り戻すことは出来ないからなのだろうか、等と……心許ない光源への不満から天涯を見上げた処、らしくない郷愁が浮かび上がってきたことに気付けば、直ぐ様、其れを振り払う様に小さく首を振って。だがそうすると次は先日瓶で殴られたばかりの頬と首筋が痛みを呈し)
――――……っ
(……反射的に動きを止め、傷痕に手を添えつつ微かに舌打ちをすれば、気を取り直す様に其の手に携えた如何にも薄汚れた書籍の頁を捲って。書籍はまるで一度泥水に落としたのを乾かした後であり、紙面は所々張り付いているし滲み切って文字の判別が困難な箇所も在り。其れでも珍しく拾った文庫本なので、例え乏しい灯りの下でも何が何でも読み進みたく。少し道を行けば街灯が在ることは知っていたが、何時雨が降るとも分からない今宵は何時にも増して外出し難く……異形と成った此の身は、流れる水に弱いからであり。背を預けるのは廃墟宛らのバラック小屋で、平常は専ら昼に寝ている主が、今夜は天候への危惧から出歩けずに中で眠っている。雑多に散らかり、気味の悪い虫も徘徊し、空気は張り詰めた様で在りながら生温く何処か鉄臭い、其の上明かりを点けることは許されないと在っては、室内よりまだ外の方がいいと此処に居て。常人の目では読書等難しい程の薄暗さだが、人間らしからぬ弱点が増えた代わりの様に幾らか暗視に強くなった瞳で、人間であることの証明みたいな知的好奇心と、人間でなくなった現実を忘却することを求める逃避願望に押される形で、執着的な程一心に腰を下ろしたコンクリートブロックの冷たさも意に介さず、紙面に踊る文字を追っていき)
……………………………………………………。
(/承知しました。素敵なロルを綴れる自信はほぼないのですが(←) 真面目に回したつもりです。また拙息は雨を気にしていましたが、連れ帰りをご希望とのことなので、そこは強引に押して頂いたていでも、一心不乱に本を読んでいた間に空が晴れていたていでも構いません。ご指摘、ご要望などあればご遠慮無く。また、あまり卑屈になるのもどうかと思いつつ、これは他の方にも言っていることですが、絡み始めてから分かる相性もあると思いますので、その場合もお伝えをorz)
トピック検索 |