匿名さん 2020-11-18 13:04:59 |
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>Royes
そうよ ,血 。 ..... 怖くなった ?
( 食事の手が止まり ,はっきりと動揺しているのが伝わってきた 。 矢張り怖いだろうか 。 否 ,血と聞いて怖いと思わない人間の方が少ないのだ 。 分っていたけれど其事実をより突きつけられた様な感覚を感じて思わず眉を下げ貴方の顔を覗き込む様に問うた 。 その言葉が若干の哀愁を帯びているのはきっと無意識の内だろうか 。 確かに人間にとって吸血とは無縁の事だし初めて故の恐怖を感じる行為でもある ,でも嫌がっている人間の血を無理矢理吸うほど自身は落ちぶれてなんていないし其処迄冷徹でもない 。 しかし前の人間はまるで自身に血を吸われる事だけが人生の楽しみだとばかり自身が血を飲んでいるときは嬉しそうに頬を綻ばせて居た 。 だから ,皆そんなもんかと思っていた 。 怖がる事なんて無いし ,寧ろとても幸福で嬉しい事 。 でも後にその人間が如何してそこ迄自身に血を吸われる事を喜んでいたのかが分かる 。 彼は惚れていたのだ ,人間でもない只のバケモノの自身に 。 其れが分かったのは彼を拾ってから5,6年経った頃だったから上手く気持ちの整理が付かなかったし ,愛なんてものは端から理解は出来なかった 。 そうしてやっと自身が自身の気持ちに気づいたのは彼が死んでからだったから ,嗚呼何て恋とは馬鹿げた気持ちなのだろう ,そう思った 。 冷たくて ,もう声も発さなくて笑いもしない , そんな彼の亡骸の横で初めて涙を流した事を今では遠い夢の御話とさえ思ってしまっている 。 最終的には死ぬのだからそんないらない感情何処かへ放ってしまえばいいものの 。 そう ,何度思った事か 。 でも目の前の貴方は以前の人間ではないし ,血を吸うとなればきっと可哀そうになる位に怖がるのだろう 。 前記した通り無理矢理にでも飲むような ,そんな鬼ではないのだから貴方が拒否をしたら仕方ないけれど何処かの動物の血で我慢する 。 でも一通り言葉を交わして分かった事だが貴方は結構真面目な方らしい ,だから血を飲ませるという交換条件で此処に来た上ではどんなに怖くても確りと血は差し出すのであろう 。 真面目で ,それ故に身を滅ぼしかねない行為に望む貴方が本当に人間染みていて少し ,何とも形容し難い気持ちに成り ,貴方の金色の瞳をじぃっと見つめる 。
〝 御粗末様 。 それじゃあ付いてきなさい ,寒いでしょうし汚れても居るからお風呂に入ると良いわ 。 お皿はそのままでいいから 。 〟
カタリと小さく音を鳴らせば椅子から腰を上げて飲み終わったグラスはそのままにダイニングの扉に手を掛けた 。 そうして軽く扉を押してダイニングから出れば目の前の廊下をそのまま真っ直ぐに歩いて右に曲がる ,突き当りの扉を開けると貴方を中に入るように促して自身は先程歩いてきた道へ踵を返して仕舞う 。 二階の部屋から洋服等を取りに行く為だ 。 勿論行き成り貴方を拾ったものだから新しい物ではなく前の人間のお古なのだがまた今度街に行ったときに自身で買って来てにらえばいいだろうと考えた 。 階段を上ってその部屋へ ,本当に久しぶりに入った 。 少し埃が待っていてけほ ,と咳き込んでしまう 。 ぼうッと暫くその部屋を眺めて居たら喉がきゅうと締まって何かがこみ上げてくる感覚がした 。 はっとして緩く首を振ってその感情を消す様に誤魔化せばタンスの中から下着 ,クローゼットから白いシャツとクロスタイ ,黒色のロングチョッキを取り出す 。 これもまた前の人間が服を買って来いと述べた所買ってきたものだ 。 自身と同じようなのがいいとこれもゴシック染みた見た目なのだが 。 暫くはこれで我慢してもらおう , また街に行ったときにでも貴方の好みの服を買えばいい 。 目的を達成したのかクローゼットを閉めて部屋の出口へ向かう 。 もう此処にはいないから ,何て自身の中で区切りをつける様心の中で呟けばゆっくりと扉を閉めて階段を下りた 。
そうして貴方の元へ向かえばこれを着る様にと単調に声を掛けて皿を片付けるべくダイニングへと足を向けた 。 )
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