主 2020-11-01 18:45:52 |
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【八番街の正面通り、まだ日も高いこの昼時から早くも色事や博打に明け暮れる人混みの中で、一枚地図を広げぼうっと立ち尽くす人影が一人分。
首を傾げる度に凛と鈴の音を鳴らす耳飾りは、主の心境を語るかのように不安げに揺れている。
視線は街並みと地図の上を交互に行き来して】
んん……うん……?
……失礼、そこの方……剣術道場を開いておられる、茜崎宗幽殿の屋敷は何処にあるのでしょうか?
「あぁん?何だって?おいあんた、こんな花街に剣術道場なんて開く大馬鹿はいないさ。
茜崎さんの屋敷なら三番街の方だよ、そんな立派な地図を持ってるのに何をすっとぼけたことを言ってるんだ?」
えぇ、そうですよね……そうだと、私も思うのです。
不思議なこともあるもので……何故地図を持ちながら、私は未だに目的の場所に辿り着けぬのか……。
【通行人に聞いても現状は解決せず、地図と景色を交互に眺め、不安そうな足取りでふらふらと花街を歩き出すことを再開した。
――気付いていない、影祓七番隊隊長『蒲鉢重音』はまだ気付いていない、自分が折角の地図を上下あべこべにして持っていることに気付いていない……】
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