煙のトピ主 2020-10-15 19:20:42 ID:e864a8518 |
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(これしか生きる道が無かった……などと、言い訳をするつもりは無い。
まともな生き方に戻る選択肢なんて今までだって幾度も示されてきた、それから目を背け続けて来た自覚もある。
第一、人の命を奪うことに一切の抵抗感が無い――だから多分、はじめからこちらの道で生きる才能でもあったのだろう)
『グッ……カッ……カハッ……』
「……ふあぁ……」
(亜人排斥派の一人である政治家の屋敷、その一室。
高価な革張りの椅子は窓際まで引き摺られており、そこに腰かけた件の政治家の首には窓の外から伸びた紐が巻き付いている。
紐の先には、外壁に足をかけその両端を掴んだダッフルコートの獣人、マシオの姿。
両手をばたつかせ藻掻く政治家はそれが自らを更に苦しませる結果に繋がっているとは思いもしない)
「良い月だなァ、今日は。
あの世までの道だってこれなら明るくて分かりやすいだろう、良かったな、死ぬには良い日だぜ」
『ぐが……がっ、か……!』
(皮肉は耳に届いたか、否か、数十秒にも及んだ政治家の抵抗はついに終わりを迎える。
口の端から泡を噴いて両腕を力無くだらりと垂らした、完全に白目をむいた顔をマシオは覗き込み、最後にその首筋に手を当てて脈を確認。
――今日の仕事はこれで終わりだ)
「お疲れさん」
(紐を回収し隣家との境にある塀の上へ飛び降りる、そのまま塀の上を歩き、足跡は残さないまま現場をあとにした)
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