宵闇の男 2020-09-10 22:11:01 |
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_____可愛いね、Caroline。ずっと二人きりが良いだなんて初めて言われたな…。僕はもう長い事君との時間を夢見ていたけれどね。君の言葉が嘘であっても…いいや、真実などもう要らない。
(痛みに悶絶する姿は絶頂を迎えた肉体の様に美しく唆られるものがある、激痛によって汗ばみ熱を孕んだ細い身体が懸命にしがみ付いて来る様子に悪い気はせず、花の香りを含んだ彼女の横髪に鼻先を埋めた。全身で感じる彼女の熱、鼓動、匂い、その全てを手にした事への歓喜を噛み締めるかのように暫く身を寄せ合い瞳を固く閉じて、一瞬だが優しげな声色で呟きを残し。その様子は恋人に想いを馳せる姿よりも母へ縋る姿に近しく、横髪に埋めていた唇に小さな耳朶が触れると軽く甘噛みをして、そのまま首筋から鎖骨へと唇を這わせた。不意に閉じていた目蓋の裏側に何者かの両腕が伸びて来る映像が浮かぶと、消し去る様に瞬時に目蓋を開き、上半身を起こして眼前で横たわる彼女を見下ろして。その表情は先程よりも感情を含まない冷たい色を漂わせ、口調も彼女が目を覚ました時と同様の冷淡なもので。すっかりと爪が剥がれ落ちた無残な二本の指を一瞥し、直ぐにナイフに付着した血液を自らのシャツで拭き取って懐に仕舞い込み、その場から立ち上がる。少し乱れた前髪を片手で掻き上げて、“ふぅー…”と自らを落ち着かせる様な長く静かな溜息を吐き終えるとぱっと明る気な表情となり「手当てしないとね、キャロル。それぐらいの傷なら一人で風呂は入れるだろ?」爪を剥がされた腕ではかなり支障はあるだろうが何の悪気も無しに、入浴を進めて本来の彼女のスケジュール通りに一日を締め括ろうとし。)
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