宵闇の男 2020-09-10 22:11:01 |
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(激痛な筈なのだが痛覚は徐々に麻痺してきたらしく鈍痛に変化していく。涙で両目の視界が歪み、爪を剥いだ彼が頬に触れる手つきは優しく感じて違和感を覚える。苦痛を与えて優しく接するなど飴と鞭に似た感覚に彼女は戸惑う。窓や時計もないこの閉鎖空間にひとりでいるのは怖くて心細い、それならと温もりを求めて接吻続けたのもあるが応えてくれるとは思わず驚き涙で滲む目は見開かれ。下唇甘噛みされては神経が研ぎ澄まされて敏感になっているのもあり、躰は甘い痛みに素直に反応示して。甘い熱に浮かされながらもナイフの行方へを気にしており、薬指へ刃先が触れられただけで瞬時に理解する。___今度は薬指の爪とお別れね。様子を観察してきて一度で終わるような彼ではないと覚悟していたが、再びあの激痛を味わうのは恐怖しかなく二度目の時は爪が無くなるその瞬間、彼の唇を噛みそうになるのを堪え、その代わりにしがみつく様に背中へ腕を回して強く抱き締める。肩幅広く筋肉質な躰は背中も男だった。唇が離れてしまうと無意識に残念そうな表情となり、拷問をしておいて優しい手つきで再び涙を拭われ愛おしそうに眺められると困惑する。確かに苦痛と快感は紙一重だと思うが、其れは彼だけだ。詳しくカウンセリングしていないので彼の精神状況がどれ程だか解らないが、きっと肉体と精神は伴っていないと感じた。精神はまだ幼い、十代くらいだろうか。彼の過去が起因しているかわからないが、少なからず過去に何かあったのだろう。再びどんな拷問が待っているか解らないが、ひとりの人間として彼を放っておけないというかなりの甘ちゃんだ。情とかではなく、彼が演技だったあの頃の思い出があまりにも強烈的で一緒に居る時が一番幸福を感じていた。抱擁は止めずに抱き締める力は強まり、優しい声色でそっと囁きながら瞳は金色を捉え、爪が剥がれていない方の手で髪にも触れて。)
そうね、私はAlainに逆らう気はないわ。ずっとこのまま、二人きりがいい。アナタにとってあの日常は欺くためだったかもしれないけど、二人で過ごしていた時が一番幸せでAlainに癒されていた。この髪も、金色の瞳も___私は異性としてアナタを見ていたのかも。もっと親しくなりたかった…男と女として。拷問されて怖くなったから言っているわけではないわよ?
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