一見さん 2020-09-02 20:05:49 |
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(一緒に食べている時やお弁当箱を返す時に感想を告げる瞬間、いつも息を詰めて緊張した面持ちを見せる彼女に、いじらしさを感じて。いつだって美味しいと伝えているのに、いつだって慣れずにその言葉を喜んでくれる様子に、胸が締め付けられるような心地になる。稀に口にする他の誰かの存在を、いつも彼女が否定してくれるから、その言葉に自分もまた安堵して。はは、と吐息混じりの笑みを零し。)クラスの少年たちなんかも、大石少女の手料理と聞いたら、きっと喜ぶだろうけどねえ。(自分の身を切るように、大人ぶった発言を口にして。表情を見るのが怖くてお弁当に向き直り、次はしっかりマッシュされたポテトサラダを箸で取って口に入れ、もくもくと咀嚼して飲み込み。彼女からの提案に、また顔を向ければ、小首を傾げて。)そうかい? ううん、しかし私はいつも作ってくれるお弁当で十分満足しているし、特別好きな食べ物は……。(箸を持った手の甲を顎に添えて正面向き直り、少しの間考えて。お弁当を見つめ、ちら、と隣に座る少女を伺い。)それじゃあ……、また甘い卵焼きを、入れてくれるかな? 私は大石少女の作ってくれる、定番のこれが結構気に入っているんだ。(はにかむように笑って、「そういえば言ってなかったっけ」なんて言い添えては、こめかみを指先で軽く掻いて。)
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