誇大妄想狂 2020-08-20 11:06:10 ID:5a7104027 |
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>導入
【【餓狼襲撃日より少し前】】
( 学校放課後、蠢木怪次郎はある建物の地下に着ていた。
エレベーターから降りると、すぐにお経に似た呪文を唱える不気味な人々の声が聞こえてくる。そこは、体育館ほどの広々とした空間で、人々が座禅を組みながら分厚い書物を手に持っている。宗教団体だ。
気味が悪い光景を前にしていると、白い着物を着た長身の男が近づいてくる )
「 どうされましたか。あなたもまた苦しみを? 」
「 いえ、俺は親戚を連れ帰りにきただけなんで」
( そう言って、足を踏み出すとその男が長い腕を伸ばして胸ぐらを軽く掴んできた )
「 行かせられませんよ。彼ら彼女らは苦しみに耐えあぐねて、最終的にこの救済地にたどり着いたのです。合理主義が未だに基礎となる現代において、我々人間は大いなる過ちを犯しているのです」
「 離してくださいよ 」
「 あなたもまた、現代の過ちそのものだ。人の心理を決して軽んじてはなりませんよ。心の苦しみは肉体の苦しみと同様に、免れる権利を持ちます。その権利を侵害しようなどとする行為は、六角教の教義理念上、到底看過できるものではありません 」
「 はぁ、…なら、キリスト教にでも改宗することを勧めてみますよ。別にこの宗教でなくても、心の痛みを癒すことはできると思うんで 」
( 男の腕を払って、足を進ませる )
「 …少年、あなたは何も理解していないようだ (男は手を伸ばし始め)、あなたの悲劇とはどんなものか、ぜひとも熟知の機会を与えて差し上げましょう。」
( 後ろから何かがくると振り向いた瞬間、男の掌が額に触れる。とてつもない身の危険を感じ、怖気が体中に走った)
「 グロロ…っ 」
( 学生服の着色として隠れていた黒い生き物たちが、男の目の前に飛び込んでは風船のように破裂していく。その瞬間に、真っ暗闇の黒煙に包まれていく。その隙に、額の男の腕を払いのけ、走り出す )
「 キモモ、俺の親戚のばあちゃんとじいちゃんがどこにいるのか、案内を頼む 」
『 構わんがお前の目指す未来に結実するとは限らんぞ 』
「 良いから早くしろ 」
( 頭や腕などまばらに潜む目の生き物たちが、黒煙の中を案内し、お経のようなものを未だに唱え続けていた親戚二人の元にたどり着く )
「 じいちゃん、ばあちゃん、俺だ、怪次郎だ。この団体はおかしい。早く逃げよう 」
( 蠢木は、親戚の腕を掴んでは急ぐよう促す )
「 やめんか、怪次郎!ワシらは今が幸せなんじゃ。邪魔をするでない!(怪次郎の手を振り払う)」
「 そうよ、怪ちゃん。今は浄化の刻限と言ってね。涅槃への到達は… 」
「 何を言ってるんだ。
この教団は、自殺者、行方不明者が何人も出ている。危険なんだよ 」
「 怪次郎、お前はには分からん。さっさと帰れ 」
「 …………分からず屋のくそじじい 」
( 蠢木は、背を翻してその場から立ち去った。
こういう時、実はどうすれば良いのかを俺は知っている。
弱い者が強い者に立ち向かう際、それは予め予想される結果を受け入れるということを意味する。
だが、俺には出来ない。勇気がない。エステラ先輩は、もし自分よりも強力な相手と対峙した場合、どうするのだろうか )
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