とある県にあるとある街にある資産家が暮らす豪邸には、資産家である彼の子供たちがいる。まだ幼い子から成人して自立している子もさまざまであるが、近所の人達からは幸せそうに見えていた。
実情は全く違うのである。
家長である資産家の父は、仕事一辺倒で子供たちと一緒に遊ぶといった父親らしいことは一切して来なかった。そのくせに子供たちには家の名を汚すようなことを許さず、友達から恋人、学校の進路に将来就く仕事すらも自由に決めさせはしなかった。幸い暴力を振るうようなことはなかったが、子供たちにはあまり関心を抱いている様子はなかった。
そんな歪んだ教育下で育てられた子供たちは、傍若無人に振る舞う父を少なからず憎んで嫌っていた。父の愛情など受けた記憶のない子供たちは、人目ある場では父を敬愛する演技をしていたが、家の中では常に父に対して荒んだ思いを抱いていた。
そんなある日、子供たちに激震が走る。
最近体調を崩しやすく、それでも仕事をしていた父が倒れ、そして父を診た医師から告げられた言葉。
「すでにステージはⅣにまで進んで、全身に転移していて手の施しようがありません。余命は三ヶ月と覚悟していてください」
あの憎らしい父が、自分たちを道具のように見ていた父がもうすぐ死ぬと聞かされた子供たち。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか分からないまま時が過ぎていく。
家長である父が亡くなった時、子供たちは何を思うのか。
それは子供たちにしか分からない……。
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