さすらいの旅人さん 2020-05-07 02:09:35 |
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「それでも、ゆっくりお客様とこうしてお話出来るので、問題はないですわ」
そういいながらカウンター下から紫色の花弁を2枚ほど取り出すと、出されたマッチ箱をちらりとみながら微笑む。
「ありがとうございます。でも、お客様の消耗品は少しでも節約しなければね」
身を起こし、花弁を包んだ両手を伸ばしタバコの先端をも一緒に包み込む。
「 今朝、アヤメの花が綺麗で…思わず摘んでしまいましたの。」
そう短く切り出すと、指の間から細く煙が立ち上りはじめる。
「…アヤメは今の時期に咲き出すのだけど、色んな花言葉を秘めていて…こんなに綺麗な紫色なのに“炎”という花言葉も持っているのですよ」
話しながら静かに手を開くと、紫の花弁は消え去り、代わりにタバコの先が赤く煙を吐き出していた。
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