とある妖 2020-04-03 21:48:47 |
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>19 / 透
( 褒め言葉を素直に喜ばれると、またそれも悪くないかと思える。ゆうるり、尻尾が揺れたのはその通りだと肯定の合図。初めて見るはずの狐を怖がりもしないのだから、子どもの対応力は凄いものだとつくづく感心する。知り合いの座敷童子と良い友達になれそうだ、と冷静に考えるも、あいつには案内役は向かないと一人思案。「人間にはついていないものだからな。綺麗かどうかはよくわからぬが」ふにふに、とやや覚束無い手つきで触れられるとそのまま緩く首を傾げる。自身の姿を見ることなど滅多にない。ゆえにどんな表情をしているのか、などと気にしていなかったのだ。「透は、温かいな」お返しのようにぽんぽんと頭を撫でてやり、子ども特有の温かさに触れて頬が緩む。「困ることはない。難しかったらまた説明してやるし、どうしてもなら同胞に聞けば良い」幼子に理解しやすい位噛み砕いて説明するなどと高度な事は狐には出来ない。ただ大丈夫であると、断言できるのはそれだけだった。普段よりもゆっくりとした歩調で下駄の音を響かせ歩く。幼子は経験がまだ浅い。何でも目新しく思えるのは、何百年と生きている己からしたら羨ましくもあった。「そうだな、たくさんある。団子屋に銭湯に呉服屋……お主は甘味は好きかのう?我が餡蜜でもご馳走してやろう」一つひとつ説明するには問い掛けの数が多すぎる。少しずつ話そうと考えながら引かれるままにあちこちへと動き。目に入ったのは甘味処。彼処は如何か、指差しながら幼子の反応を窺ってみようか )
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