匿名さん 2020-03-29 00:14:35 |
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…あんたが結ぶってのは論外だが、蝶ネクタイは案外悪くないかもな。
( 相方の発言でふと首元に在る不格好に結ばれたネクタイを片手で摘んで眺めてみる。これまでネクタイを締める機会なんて一度もやって来なかった為に、結び方なんててんで見当も付かない。『 ネクタイ 簡単 結び方 』と調べても、サイトに嘘が書いてあるのかそれとも自分の理解力に欠陥があるのかどう足掻いても上手く結べない。ならばいっその事開き直って蝶ネクタイにするのも存外良いのでは、と皮肉として言葉を放ったであろう相手に対し、顎に手を当て思案顔を。とは言え今から買いに行くことなど出来ないので、若干気にする素振りを見せるに留め我が家を後にして。一歩外に踏み出すと目に入ったのは雲一つなく清々しいほどに青く澄み渡った空。陽光は燦々と降り注ぎ自分達を眩く照らしている。その刺すような光がまるで自分達の事を咎めているように感じてしまうのは、きっと不本意な任務を前に神経が尖っているからに違いない。足元に落ちた濃い影に目を落としながら相方と共に駐車場に停められた車へと向かう。気障ったらしい流れるような所作で助手席のドアが開けられそれと共に''お嬢さん''と言う言葉が聞こえた瞬間、無意識の内に顔が強張るも、こんな事でいちいち癇癪を起こしていたら流石に身が持たない。)
──そりゃあ、ドア勝手にこじ開けて彼女を叩き起こしに来てくれる優しい優しい彼氏とのデートだからなぁ。念入りに準備しないと失礼ってもんだろう?…次は俺が起こしに行ってやるから楽しみにしとけ。
( 言葉の最後には相手の方へと顔を寄せ噛み付くように鋭い犬歯を見せつけながら低い声で唸ると、相手の反応を待つより先に助手席に乗り込み勢いよくドアを閉めて。腰を落ち着けるとジャケットから煙草の箱を取り出しながら先程軽く目を通した書類の内容を思い起こす。無断で人身売買、臓器の横流し、動いているのは少数の人間、取引場所は港湾倉庫と思われる…直接現場に殴り込むんじゃ駄目なのか?一人首を傾げる。下調べをしろと言うからには恐らくその前にやるべき事があるのだろう。頭脳労働は相方の仕事、悔しいが自分はそれに従った方が上手く行く。ただそんな感情はおくびにも出さず、後から運転席に乗って来た相手に対し煙草片手に綽綽とした態度で「 それで、デートプランの最初は?」とでも訊ねてみようか。)
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