匿名さん 2020-03-29 00:14:35 |
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…ほー、そいつは大変だ。それで一人じゃ不安だからこうして俺を迎えに来たって訳だな。なら仕方ない、手を貸してやろう。
( 一度に二つの事を行う何て器用な事は出来ない性分。ワイシャツのボタンを留めたり荒れた部屋のどこかにあるネクタイを探したりしたながらの為に、相手の話は耳から入っては脳内で吟味される事なく逆側の耳から抜けていく。真面目な顔で語る相方に対して至極面倒そうな顔で全く噛み合っていない返事をしながらとっ散らかった山の中からやっとネクタイを発掘すると、何年経っても慣れない手付きで首元にそれを掛けて。最中ふわりと此方へ向かって飛んできた紙飛行機を片手で取って広げると、部屋と同じく乱雑に散らかった頭の中から記憶の一片が蘇る。そうだ、そう言えば最近不穏な動きをしている組織があるとか何とか聞いていた。任務を受けた時にどうして下調べくらい相方一人に任せないのだと陰で憤慨した事を覚えている。)
うっせ、これでも俺なりにちゃんと保管してんだよ。まさか床に広がってんのが重要書類の束だとは誰も思わねぇだろ。──要するに今日は一日南雲くんとデートって訳か、全く嬉しくって涙が出てくるね。お察しの通り任務の内容なんて殆ど飛んじまってるから、精々エスコートの方頼みますよ。
( 日頃自分のことを笑顔でチクチクと突いて来る相手と一日中一緒に過ごさなければならない事実にゾッとしながらも、ボスからの命令である以上断る選択肢などはなから無い訳で。であればさっさと済ませて帰るのが賢明だろう。体からそんな諦念を含んだやる気が漲るのに任せ、せかせかと着替えを済ませて洗面所に向かうと冷水を顔に掛けて無理やりに意識を醒まさせて歯を磨き。途中はたとスマートフォンが無いことに気が付き床に這いつくばり、起きがけに寝惚けてぶん投げたそれを求めて書類と漫画の山を掻き分け。その途中、読みかけの雑誌に気を取られること数度。そうして出発の準備を終えたのは相方が迎えに来た一時間も後の話。漸く探し当てたスマートフォンを持ち人を待たせている事など知るかといった太々しい態度でスニーカーを履くとドアを開け、「 おら、早くエスコートしろ 」と親指で快晴の広がる外を指して。)
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