主 2019-12-11 01:03:56 |
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>>誠
……そうねぇ。確かに、ちょっと危ないかもしれないわ。
(結果論、という彼の言葉にふむと考え込む素振りを見せては顎にそっと手を添えて。確かに、先程まで特に彼の素性を知らずともそのまま共に宿舎まで帰ろうと自分は考えていたし、その事について危機感すら抱いてなかった。護衛者が居ない令嬢として、その危機感のなさは如何なものだろうかと問われれば決して良いとは言えぬものだろう。「……貴方は、とてもしっかりしてるのね。」彼に指摘されるまで、自分はそんな事すら気付けずにいたというのに。自分が特に警戒心が薄いのだと言われてしまえばそれまでだが、それでも美弦は自分より年下であるはずの彼がとてもしっかりしているように見えて。護衛者を持たない、という点では共通しているし、宝城グループの令嬢として周りに自分の家をよく思わない人間が居るのもよく分かっているのだが、やはり彼のようにしっかりと周りを見て警戒するような事は上手くできず、「偉いわ。」と素直に彼のことを賞賛し、どこか真面目な顔をした彼とは対照的ににこりと微笑んで。)
>>玖珂
……え、ええと……。
(ずい、と近付けられた顔に人馴れしていない美弦の頬は朱を散らしたかのように赤くなり、どこか困ったように眉を下げて。普段人を呼び捨てで呼ぶことなど滅多にしない為か、改めてもう一度名前を呼べと強請られるとどうしても気恥しさが勝ってしまう。先程までしっかりと絡んでいた視線をちらりと逸らしながら「恭司郎、」とさっきと比べればだいぶ小さくなってしまった声量ではあるが相手の名前を呟くように呼んで。人とのパーソナルスペースが狭いのだろうか、と相手との距離感を測りながら思わず1歩だけ後ずされば相手の呟きが耳に入りへらりと気の抜けた笑顔を浮かべながら「お母様と同じ色なの。」と少し誇らしげに答えて。優しくも、美しく気高い自慢の母。性格は控えめな自分とは真逆の大変しっかりした性格だが、そんな母との唯一の共通点が褒められたことがなんだかとても嬉しくて美弦の頬は思わず緩んでしまい。)
>>芹華
……そう、
(彼女の言葉を黙って心の中にしまっていた美弦だったが、最後の言葉に大きく見開かれた瞳はみるみるうちに滲み、耐えきれずにぽたり、と美弦の頬から滑り落ちた雫はそのまま廊下に落ちて、水玉模様を描いた。一度零してしまった雫は止まることなく、そのままはらはらと美弦の頬を濡らす。「──幸せ、だったのね。」堰を切ったように溢れ出してしまった雫をそのままに、美弦はそう言ってふわりと微笑む。彼は、最期まで私の事をきっと案じて意識を手放したのだろう。泣かないで、と自分の頬を撫でた彼の手の感触がまだあるような気がして、美弦はぎゅっとそれを確かめるかのように両手を握った。今まで自分は未来を失った彼を置いていかぬようにと立ち止まっていた。だが、それでも。前に進んでいいのかと。彼が護ってくれた、創ってくれた未来を歩んでいっていいのかと。「……ありがとう、」涙を流しながら笑う自分の姿は酷く滑稽で、小さな子どもみたいだろうか。それでも、優しい彼女に感謝せずにはどうしてもいられなかった。前に進む勇気をくれたのは、間違いなく彼女だ。)
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