主 2019-12-11 01:03:56 |
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>宝城先輩
(変わらず優しい微笑みを浮かべる彼女に、先程の自分の直感に確信に近いものを覚えた。この人のこんな笑顔を護るためならば、彼女が傷つかず微笑んで居られる世界を作り上げるためならば。きっと茨の道でもその身で切り開いていけるような、そんな感覚。自分が彼女を護る…そんな可能性もあったのだろうかとすら考えさせられるし、きっと護衛対象の居ない頃の自分が今この場に居たらその覚悟が出来る。でも、今の芹華はそれは自分の役目では無いと理解していた。だからこそ)
…じゃあ、私からも先輩と護衛者さんの事についてひとつだけ。…これは私勝手な考えで、押し付けるつもりは無いので先輩の気に食わなければ部外者の戯言だと、そう思って下さい。
(それが自分の願望なのか、それとも彼女にとっては呪いじみて響いてしまうのかは芹華には分からなかった。だからそんな予防線を張りはするが、これから自分が紡ぐのはお節介、自己満足、独りよがりで私見の塊でしか無い言葉だというのは変えようの無い事実だと、痛いほど分かっている。)
私、さっき話したとおり護衛対象が居ます。先輩が言うように多分、尊敬してます。…でも、それでも、私先輩の笑顔見てそれを“護りたい”って思いました。私の両手で護れる命は限られてるから、それはもう叶わないけれど。思ったのは本当です。
(話し出してしまった以上もうこの口は止まらない。だからせめて、自分の不用意な言葉選びで彼女を傷つけてしまわない様慎重になりつつ。)
私、先輩の護衛者さんの事は分かりません。先輩の事もまだ全然知らないです。…でも、きっと先輩の笑顔を護れたのだとしたら、少なくともそれだけはその人にとって幸せだと思います
(彼女の護衛者が命を護れた事が幸せだったかは分からない。きっと自分ならその先もずっと護りたいだろうから、それでも彼が最期に思い出したのが彼女の笑顔だったらと願わずにはいられない。“だから笑って下さい”とは言えなかった…彼女にとってそれは呪いになりかねないから。けれどこの言葉が正しかったのかも自信はなく、怒鳴られても頬を張られてもやむ終えないし覚悟はしていたが、話終えてからは彼女の顔を見つめるのは憚られて。)
>海原くん
…憎からず、思わない程度の…友達?
(予想外の言葉に芹華は丸い瞳を更に丸くして二度、三度と瞬きを繰り返す。彼が笑顔で何を言っているのか最初は理解出来なかったが、瞬きを繰り返してその言葉を反芻するうちに次第に思考が追いつき「…本当に変な人ですね、貴方は」くすりと笑みを浮かべた。きっと彼も自分と同じで意固地なのだと思えばそれを突っ撥ねた所で諦めはしないのだろう。「…良いですよ?その代わり私と、私の護衛対象に刃を向けたら海原くんの頭に赤い花が咲きますからね」そんな穏やかではない事を本気で言っている訳ではなかったが、それでも“憎からず思わない程度の友達”なのであればこれくらい不遜な態度が似合いだろうと彼を真似て茶化して見せ。図書棟の前に着いたのに気がつけば、いつの間にこんなに話し込んで居たのだろうか。彼と話すその時間は思いの外楽しくて時間の流れが早く感じた。)
>恭司郎
…だから、恭司郎と口喧嘩してて…
(若い教員はどうやら上手く勘違いしてくれた様だが、眼鏡の教員はそうはいかなかった。尚もこちらに対ししたり顔で指摘してくる様が煩わしくて。芹華の言葉に対しては察しが悪いのか疑っているのか、だと言うのに状況を把握する観察眼は酷く冴えていて…自分の切歯する嫌な音が口内に響くが、それでもまだ冷静ではいられたーーー続く言葉を聞くまでは。手を繋いでいる彼に投げられた言葉に次第にふつふつと怒りが込み上げる。“財閥の権威を笠に日頃からやりたい放題”?…彼がいつその家名の権威を行使したというのか。“立場を利用し、他人の迷惑を顧みず自己を押し通すその身勝手さ”?…自己を押し通しているのはどっちだ。“女の後ろに隠れてやり過ごそうとする姿”?…彼が黙しているのは自分が言い含めたからであって、本来なら彼は…。そう心中で言い返すに留めていたのに。あまつさえ、彼を“クズ”などと形容するものだから、もう弱々しい振りはやめた。)
先生。それ以上恭司郎を…私の護衛対象を侮辱する様であれば、私は貴方を敵と見做しますが構いませんね?
(その言葉はいつもの芹華の不遜とも高慢ともとれるその態度で紡がれ、懐のリボルバーへ手を伸ばす代わりに繋いだその手に力を込める。「伊月家丸ごと敵に回すおつもりならどうぞご自由に。どんな手を使ってでも貴方をこの世界から引き摺り下ろしてあげますよ。」権威を行使するとは、他人を脅すとはこういう事だと思いながらその眼鏡の奥の瞳を見据えて、重ねてもう一言。「そもそも、こういう体制をとっている学園の指導者が契約済の護衛対象と護衛者を捕まえて“女の後ろに隠れてる”だなんて口にするのも如何なものかと思いますけど。護衛対象の前に立つのが護衛者でしょう?護衛者の筆頭である教師がそんなこの学園の根幹を揺るがすような事を言ったと知れたら、この学園の体制を信じて護衛対象の子供達を預けている保護者からさぞ抗議の電話が殺到するでしょうね。……ねえ、先生?平和裏に、お互い一切の痛手を負わずにこの場を収めるのは“何もなかった”って事にするのが1番だと思いませんか?」そう提案すれば、小首を傾げにっこりと笑顔を作って見せて。)
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