主 2019-12-11 01:03:56 |
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>>誠
まぁ。お気持ちだけいただいておくわね。
(薬を融通してくれる、との彼の提案に口元を隠して少し驚いたような顔をしたもののすぐにふるふると首を振れば上記を応えて。自分の父がいつも口にする‘素晴らしい発明や商品にお金を惜しむ必要は無い’という言葉は美弦にもよく染み付いており、何の見返りもなしに施しだけ得ようとするのは自分の中のプライドがどうしても許さないらしく。と、彼から告げられた言葉にきょとん、とヘーゼル色の瞳を丸くしては「でも今はもう名前も知っているし、何も問題はないんじゃないかしら。」と、そのまま不思議そうに首を傾げて。確かに彼の言うとおり先程まで名前も知らない男子生徒だったが、今ではもうお互いに自己紹介も済んだし知らぬ仲ではないだろう、と。これが街中で知らない男性に声を掛けられたのであればさすがについて行くことは無いが、ここは学校でしかも彼はこの学校の生徒である。そこが美弦が蝶々結びを解くかのように簡単に警戒を緩くしてしまう理由らしく。)
>>有川先生
……家族のように。
(ぽつり、と彼の答えをまるで自分に言い聞かせるかのように復唱をしてはそっと目を伏せて。自分はずっと、彼の事を本当の家族のように思っていた。彼も、そう思っていてくれたらいいなとも。だがそれはあくまで自分の理想でしかなく、彼がそう思ってくれていたという確信もなかった。…彼が、そう思ってくれていたと自惚れてもいいのだろうか。「私、また家族を作れるでしょうか。家族と思える、誰かを。」自分から出た声は、自分でも驚く程に酷く怯えたような、悲しそうな声をしていた。──嗚呼、そうか。と、そこで気付いた。自分は、誰かを新しく雇って彼を忘れてしまうのが怖かったのか、と。)
>>芹華
…ふふ、身近な誰かに影響されるなんてとっても素敵なことだわ。
(先程までのどこか大人びたようなイメージとは少し違う彼女の様子があまりに微笑ましくて自分が知らぬうちでも思わず頬が緩んでしまい。そのあとの彼女の小さな呟きを器用に拾い取れば「…その彼のこと、尊敬しているのね。」と優しげな声色を零して。彼女たちのことが微笑ましい反面、自分にはもう手に入れることの出来ないその関係性がどこか眩しくて、思わず目を逸らしてしまいそうになる。嫉妬とか、羨望とかそんなチープな言葉では片付けられない雁字搦めになってしまったその感情につくべき名前を美弦はまだ知らないし、それに名前をつけるべきではないと思う。「貴方たちがずっとそのままでいられることを願ってるわ。」その言葉には、嘘偽りなどはひとつも無い。)
>>玖珂
!
(美弦、と自分の名前を呼ばれただけなのにドキリと心臓が大きく鳴った。‘宝城グループのご令嬢’ではなく、‘美弦’として。彼は接してくれるのだろうか。美弦は大きく見開いたその瞳を、1度ゆっくりと伏せた後にまた開き、彼の瞳を真っ直ぐ見つめる。それなら、自分もするべきことは1つなのではないだろうか。「?────なあに、恭司郎。」‘玖珂財閥の嫡男’ではなく、‘1人のクラスメイト’として彼を見ること。普段家柄だ何だとまるで生まれつき自分の絡んだ鎖のようなものを、今だけは解くべきなんだと。普段から縛られているナニカから解放されるだけで、美弦の胸はすとんとどこか軽くなったかのような感覚に陥って。)
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