! 2019-11-01 16:11:42 |
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(泪と星の夜
それがただ、頭の中に、無慈悲にも。
故郷を離れて私は進む。ところで私は誰であったか、否。何者でもないのだけど。私には一つ、それだけの小さな夢があった。あの日みた星空が忘れられない。たったそれだけの夢を追いかけて星を眺める。あの星を、あの日私が追いかけた光をまた、見たい。
幾分が進んだ。星の流れた方向を見失わないよう方角を確かめる。私にはそれだけの夢がある。なんてことのない、ただの塵の塊かもしれないけれど。あの星がどんな仕組みでできているのかを知りたい。手で掴みたい。
その次の日は、嵐だった。
暮れた夕日に目もくれず私は泳ぎ続ける。雨が無慈悲にも私と水面を打ち付けた。私は思わず水面から顔を出すのをやめて水中へ潜りいつもより速く泳いだ。ゴロゴロと空が鳴った。水面越しでもわかるほどに、鈍く、曇天な空。私は思わず泳ぐのをやめてしまった。道中いくつかの同胞が沈むのを見かけた。雨は無慈悲にも打ち付ける。沈むそれに目もくれず何かを求めるように水面に手を伸ばす男の顔さえもみず、もがき、沈むだけの人を、私は)
ごめんなさい
(ただそれだけの、夢がある。私は進んだ。嵐の後の、静かな夜だった。月明かりが私を照らした。ロマンチックだとでも言えばいいのだろうか。月は、いつもより私を照りつけた。嫌に眩しく思えて振り返れば光が通った。それは、まさしく、あのとき私が見た星であったのだ。星で、それはまさに。私は夢がかなったのだと興奮して水中にどぷ、と波紋をたてて潜った。ぐるぐると円を書くように、踊るように、歌うように。私は星を眺めた。とても美しく、きれいだ。私は目を閉じて)
ありがとう
(ぽちゃん、と誰かが水溜りを踏んだ音がした。
私は誰か、私はただの、ありふれた黄色いレインブーツである)
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『勧誘可能 暇つぶしです(笑)』
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