! 2019-11-01 16:11:42 |
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……はは、……ごめんね。
(颯爽と君の前に立ち塞がりクールに守るはずだった。どっかのアクション映画みたいに。しかし現実は上手く行かないもので、穴だらけの体で地面に転がる情けない姿に思わず苦い笑いを零す。どこを何発撃たれただとかそんなことはわからない。ただあちこちで爆ぜる痛みが、息をするたびに背中でひたひた揺れる血溜まりがスプラッタな現状を嫌と言うほど教えてくれて、お見苦しいものをお見せしてすいませんと謝罪を一言付け足してみたら今際の言葉みたいに響いた。みたいというか今際の際だが。
全身の風穴から砂時計のようにサラサラと体温が抜け落ちていく、恐ろしく寒々しい感覚。それが命のリミットを示す時計だと本能が理解している。最後の一粒が落ちる前に君に何か伝えなければ。霞む思考を探りながら重たい瞳を上に向ければまるで自分が撃たれたような青白い顔の君が居て、罪悪感とこの期に及んで通常運転の恋心で死にかけの心臓がドキリと跳ねた。君の笑顔や仏頂面や不機嫌な顔は飽きるほど見てきたけれどそんな表情は初めてだ。痛々しい眼差しにやっと用意した言葉も喉奥へと引っ込んでしまう。俺、少しは格好良かった?だとか、ちょっと惚れた?だとか。どれを言っても凍りついた表情に傷をつけてしまいそうで、結局鉄臭い溜め息だけゆっくりと吐き出して青空へと目を逸らす。お迎えの天使とやらはその影すら見えないが君が側にいるのだから文句は無い。人間は、特にこの街の人間は、大抵は一人寂しくわけもかわらず死んでいく。あそこで転がっている死体のように──どうやらがむしゃらに撃ち返した弾丸も上手く当たってくれたらしい、俺は正真正銘君を守って**るわけだ。十二分に幸福じゃないか。
あれほど疎ましかった痛みさえいよいよ消え失せ、意識が冷たく濁ってくる。言いたいことは山ほどあれど口にする力など残っていない。それこそ砂粒のような微かな力をどうにかこうにか掻き集め、かさついた唇をあ、の形にゆっくり開く。"愛してる"なんて言えやしない。もし俺が死人にそんな言葉を遺されたら、脳裏に血みどろの死体がチラついて一生恋もキスもできなくなる。正直それも魅力的だけれど俺はそこまでエゴイストな男じゃない、そもそもそんな度胸も無い。だからこそ笑ってたった一言、美しい言葉だけ置いていく。
ヒーローには劣るけれど、想いひとつ伝えられない意気地なしに最後の晴れ舞台を与えてくれた運命に対して。そしてそんな男を看取ってくれる君に対して。願わくば次に目を覚ますのは天国か、あるいは君が側に腰掛ける病室のベッドであらんことを。)
──……ありがとう。
(/リハビリと長文練習にスペースお借りします!
銃弾飛び交う物騒な街、好きな子を守ったけれどいまいち格好がつかないヘタレ男というざっくりした設定です。
小説ロルなのか何なのかよくわからない文章になってしまいましたが一応「勧誘歓迎」とさせていただきます。
素敵な場所を提供してくださってありがとうございました!)
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