賢者アークエット 2019-07-16 19:33:40 |
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【 雷火の騎士アレクサンドラ / 第二要塞都市ソルブランカ- 牢屋 - 】
> 千里の騎士ガウェイン ( >72 )
( パチリ。瞼が自然と持ち上がり目が覚めた。今は何時だろう?時間や太陽、月からも隔離され真っ暗闇が広がる牢獄。壁に寄りかかる背や、臀部から伝わる床の冷たさ。思わずブルリと肩を震わせ、両の手で左右の二の腕を上下に擦り体を暖める。自分以外誰も居ない世界。静か過ぎて少し不安を覚えるが、とても落ち着く。集団の中で家族が側に居ない引け目も、友人と言う存在の不在による孤独を感じる事も無い。小屋の中で一人、母の帰りはいつだろうかと楽しみにしていた、幸せだった一時をふと思い出し、穏やかな表情を浮かべ。乱れた赤髪を手櫛で整え、首より前に後ろ髪を流し、一本に束ねた三つ編みを編み込み直す。そろそろ来る頃合いだろうと覚悟を決め )
っ……あら、その声。また貴方にお会いするとは思ってもいませんでしたわ。……まぁ、それにわざわざ、囚人の私なんぞの為に、ゆったりと着やすいお洋服を用意して下さって感謝致します。お陰で風邪を引くのは回避出来そうですわ。有り難く使用させて頂きます
( 静寂を破る一人の足音。来たのか、と視線を檻の方へと向けたならば、暗闇に慣れた瞳には強烈に輝いて映るカンテラの灯り。うっ、と顔をしかめ光を遮るように顔の前に右手を翳し。だが最近聞き覚えのあったその声に、パチパチと驚いたように瞬きを繰り返す。次いで何かが置かれる音。灯りから視線を反らした先、罪人相手ならもっと粗末に扱ってもいいものの、彼の人となりを現すかのように丁寧に畳まれた、要求し一度は却下されたはずの衣類と、追加で毛布の差し入れ。右手を下ろし、左足に負担を掛けないよう立ち上がれば受け取るべく近寄り。両膝を床に着き、シンプルな麻の上着を手に取り広げれば、明らかにサイズの大きい男物。だが172はある身長故に、小さくて困るより寒さを凌げるなら、何でも構わない。人によっては嫌味にも聞こえてしまいそうな口振りにて、感謝の意を示し。その場で着替える等と淑女としてあるまじき行為はせず、頂いた毛布だけ早速肩に羽織る。一枚あるだけで外気から守られる感覚に、ほっと息を吐き出す。とそこで、これで用は済んだとばかりに、足早に退室して行こうとする背に目を向け )
……? 失礼ですが、刑を伝えに来たのでは無くて? 私てっきりそうなのだとばかりと思っていたのですが、もしやまだ決まってはいらっしゃらないので? 上は何を考えているのかしら
( 必要最低限の食事の配膳以外に、次誰か来る時。それは死刑宣告の時と予想していたのだが、どうやらそうでは無いらしい。マリアを失った守護騎士と言えど、治安維持等他に仕事が立て込んでいたならば引き留めてしまう事にはなるが、疑問をぶつけずには要られない。自分の生死に関わるから、と言うのもあるが相手や中庭の騎士の様子から、審判を下すなら早々に決定してしまった方が良いはずだ。ずるずると引き伸ばせば、それだけ兵の中で不満が溜まる。苛立つ兵の様子を見た民間人は、さらなる不安と混乱を胸に抱く事だろう。外の情報を得るには目の前の、名の知れぬ騎士から聞き出す他に無い。素直に答えてくれるかは彼次第だが )
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