梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(流石。茉莉花は自分が発した一言が、彼の中に潜む情報を纏め上げ、十の答えとなって瞬時に返答する彼の鋭さ、磨かれた知性のなせるその早業に舌を巻く。そして続く彼の明確な答えと、そう答える彼の澄み切った強い瞳を目の当たりにして美しいと感じる。やはり彼は他人のために優しくなれる人で、そこに一点の曇りも迷いもないのだろう。『…坊、俺にもそんな顔してくれはるんやね。』一瞬自分の目を疑った。彼が自分に向けた淡い微笑み、当然といったように自然に向けられたソレは目から脳へ、雷に打たれたかのように直ぐに伝達されて、自分の内に巣食う彼への煮詰まった感情を経て微笑み返す。ただ、それはここに居ない弟への心配が吐き出されたと同時に消えてしまい、心から残念に思う。『…ま、大丈夫やろ!そんに心配しとる顔、坊がしとったら皆も心配になってまうで?俺も心配なるしな?』しかしすぐにいつものおちゃらけた雰囲気を纏うと彼を安心させるように頭を軽く撫でようと手を伸ばし。
一方で、彼の自宅。出過ぎた真似だっただろうか、と少し不安だったが、彼が苦無を受け取ってくれたあの時の丁寧な手と、彼からの言葉が与えてくれたのは純粋な嬉しさ。そんなことを思い出して一人上機嫌に送られた情報を纏めていたが、訪れたノックの音と聞こえてきた声に案外早かったなとぼんやりと思い腰を上げて。のそのそと玄関の戸に手をかけたところで、ふと相手が誰だろうかと疑問に思う。先程の声は聞き覚えがあるような気もするが、念には念を入れても損はないだろう「あぁ、すまない…。イチか?」と自分が聞き間違えないであろう声の持ち主の名前を出してカマをかけ、戸にかけた手とは逆の手には苦無を構えて。)
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