梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(嗚呼、やはり彼の掌は暖かい春の陽だまりの如くじわりじわりと温もりを与えてくれる。不思議と気持ちが晴れやかになるのもそれと同じだ。それを唯一与えてくれるこの手を自分は守りたかった。危うく失いかけた。その事実を思い出すと目を伏せかけるが、その時耳に届いた『ありがとう』に驚いて視線を彼に戻す。マスクがあって良かった、この情けなく染まり緩んだ頬は誰にも見せられない。
勧めてもらった風呂場もやはり清潔で頭の中の整頓も楽になりそうだ。程よい温度の透き通ったお湯が張られた湯船に浸かるとじわじわとこみ上げてきていた痛みも揺らぎ、これからのことに少し思考を巡らせる。組は彼が戻ってきてくれたから大丈夫だろう…残念ながら彼に反発を覚えるものもいるとは思うが、その時こそ自分の出番だと考えれば良い。今の組に彼が必要なのは間違いないのだから。問題は大蛇だ。大蛇といえばろくな話を聞いたことが無かったが、まさか彼の仇であったとは…己の情報収集の甘さに反省しつつ湯浴みを終え、渡された以前と同じ着流しに袖を通し終えると客間に戻り、襖を静かに開けて。)
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