梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
『はい、出来た!…それでお前んところのお頭さんは何であんな辛気臭い顔してんだい?って言えないか。……随分強い痛み止めを打ったようだけど今晩は覚悟しときなさいね。数日は安静。分かったかい、坊や。』
(闇医者は的確な治療を終えると相手の腰をバンッと叩いて陽気に笑い、軽い調子で続ければ相手の顔を覗き込み目尻の皺を深くして口元を緩ませつつ静かな圧を掛けて。それからササッと片付けを済ませると『お頭さんを呼んでくるから待ってなさいね。』と声を掛けて治療室に相手を残し部屋を出ていって。
待合室、壁際にある長椅子に腰掛け一人気持ちの整理をしているところ闇医者が近づいてきて梔の傷の具合や痛み止めの副作用について聞かされる。それと共に傷薬を渡され何故自分に、と顔を上げれば『この後も暫く一緒にいるんだろう?…可愛い部下たちを大事にしないと駄目だよ。』と。更にしっかり多額の医療費を請求されれば思わず苦笑が漏れ、この闇医者には敵わないなと思うと共にほんの少しだけ心にゆとりが生まれた気がして。そのあと暫く世間話をさせられ闇医者に後で治療費を払う旨と礼を言っては背中を押される形で未だ少し気が引けながらも彼の元に足を向け。「…梔、」コン、と開けっ放しになっていた治療室の扉を軽く叩いて彼に話しかけ静かに名を呼ぶと、彼と目が合うよりも先に視線を横に流し「…此処には長居出来ないから、そろそろ行くよ。」と何処にと行き先は言わずにいつもなら傷の具合や体調面を気遣う言葉を添えるのを目を合わすこと無く足先を外へと続く扉に向けて。)
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