梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(彼の緩んだ目元は今宵の空に浮かぶ緩やかな上弦の月の様。しかし、その穏やかな目元には、最近の戦闘や問題の影響か、少し疲れが滲み無意識のうちに手を伸ばしそうになる。「左様ですか…?…いえ!決してそんなこと…は…。」兄と似ている、そう口にするのはごく僅かな人間のみ。その中には彼も含まれており、内心兄と似ている、と言われるのが少しだけ嬉しいのは恥ずかしいので秘密だ。しかし、次いだ彼の質問には吃ってしまう。彼の目元は優しく、穏やかだがその奥には鋭く、物事を的確に見据える冷静な叡智の瞳があり、その下に続く肌は健康的で女性とは違う美しさを持っている。口元は常に柔らかく、キッ、と結ばれる時は勇ましく、また、厳かな雰囲気を身に纏う。背筋の伸びた姿勢正しい彼の立ち姿も合わせて考えても、彼の外観からは疲れた要素は認められない容姿である。そう答えようとするも、先程手を伸ばそうとした、彼に似つかわしくない目元の隈が目に入ると、出しかけた言葉も尻すぼみになってしまう。「…貴方の容姿はいつでも洗練されており、疲れは感じさせません。…しかし、最近の事案が続いたこともあり、目元に隈が…。」そう言いつつ今度こそ手を伸ばしたが、彼の母に到達する前に彼の手が自分の頬に触れる。「…兄は、何も言わずに出て行き、何も言わずに帰ってきました。それが怪しいと思い、榊さんに何か危害を加えるのではないかと…すみません、失礼します。」彼からの問いに答える途中、携帯が鳴る音に反応し、一言ことわりを入れてから確認する。メールの意味が一瞬分からず二度読み返し、小さく溜息を吐いて。この部下からの情報であれば間違いないだろうが、まさか榊さんがそんなことをするだろうか。【ありがとう。こちらに異変は無し。引き続きアジト内の警戒に当たれ。以上。】簡潔にそう返信を送ると彼に向き直り、その瞳を見やる。…自分にはどうしても、彼を疑うことはできない。かと言って…「…すみません、榊さん。急用ができまして…。アジトまであと少しですが、自分、離れさせていただきます。」愛刀のことは口にせず、そう言うが早いか夜の闇に紛れる。彼のことは心配だが、アジトまでは後少し…今は愛刀の情報を確かめ、彼の疑いを晴らすのが先だろう。スラムへの道のりを目立たぬように辿りながらそう考えて)
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