梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(敵の数が少なければ勝機があるかと周囲を確認するも、立ちはだかるのは自分の背を超える大男。奴に騒がれず部下を連れて彼を探すのは難しい、と判断すればせっつかれるがまま両膝を床につき「…榊さん…っ!」『お頭っ!!』そして何分かの時間が永久に続くかのように感じていた静寂はゆっくりと開かれた扉の音と、その奥から現れた彼への自分たちの声によって破られる。一見、彼の凛とした立ち姿に外傷は認められないことを確認して小さく息を吐いて落ち着きを取り戻すが、彼の瞳を見据えると理知の泉に波紋が広がるように彼の瞳に何かが揺れ動く。慌てて言葉を続けようとするも、その彼との間に男たちが割り入り話が早々と展開されてしまう。しまった、これが兄が言っていた催眠かと気付いたのは彼の今まで聞いたことのないような低く、冷たい…否、温度自体がない…何もない無機質な音が成した意味を理解するより先に新たな発声したのは赤髪の男。彼の暖かい瞳に刺す温もりは今はなく、ただ冷たく凍てつく無機質な氷柱のような敵意が溢れるように、彼の優しい心を利用したこの男に思わずその腹に蹴りだけでも入れてやりたい衝動に駆られるがこちらに向いた銃口に体を硬くする。「…誠さん、自分達が邪魔ですか?」静かになった空気と、赤髪の男の顔から消えた笑みにハッタリなどでは無いと背中に冷や汗が流れるが、ここで引けば彼はもう帰ってこないだろう…それだけは嫌だ、と喉の奥から絞り出すような声でそう切り出す。一度声に出してしまえば、あとは言葉がスルスルと出てくる。「自分達は今のあなたには従いません。徹底的に邪魔しましょう。……俺は、貴方が『ヤマトの頭領』じゃなくても『榊誠』であれば死ぬまで従うつもりでした。しかし、今の貴方は、『榊誠』ではない。…誠さんは、他人の痛みが分かる優しさと、信念を持っている方です。その内面を伴わない貴方は『榊誠』とは違う!」彼の目を真っ直ぐと見据えながら、ただひたすらに心中を暴露する。イチはああ言ってくれたが、本当に響いてくれるかは分からない。しかし、伝えたいことはたくさんある。彼が、自分に教えてくれた他人への優しさを、彼が本当に忘れるはずがない。きっと、思い出してくれると信じて。『ガタガタうるっせぇなぁ!!とっとと消えろってんだよ!!』しかし、その言葉は苛立ちが募った赤髪の男の一言によって阻まれ、どこまでも邪魔をしようというその男にとうとう堪忍袋の尾が切れたプツン、という音が聞こえた。愛しい彼を貶め、操り、これ以上苦しめようというこの男を前に冷静な自我を保てるわけがない。「やかましい!俺は今おまんと喋りゆがやないちや!いね!!」起き上がる反動とともに靴の踵に仕込んだ刃物を出刃しながら赤髪の男の拳銃を握る手へ回し蹴りを見舞うと、それに弾かれた拳銃は幸運にも部下の足元へ飛ばされ、それを部下は後ろ手で把持する。「…やきに、俺は誠さん、あんたを今から取り戻すけんのぉ!!」部下の手首の縄を仕込み刃で切り離すと未だ不利な状況であれど彼の前に堂々と立ちそう宣言して)
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