方言男子、いかがですか？

「んふふ…俺、陸上部のエースなんよ」

「えええぇ！？すごいやん！…じゃあめっちゃ、足速いっちゅーこと？…いいな…！」

「せやろ？ずーっと走ってたんよ」

「…それ…大変やないと…？……俺…そろそろ…ぎ、ギブ……」

「大丈夫か？ちょっと休憩しよか」

響は公園のベンチを指差す。

「…う、うん……なんかごめんね…楽しいとこやったんやろ…？…ほんと…ごめん…」
響の提案に従い、しきりに謝りながら奈津はふらふらと公園のベンチへ歩く。

「大丈夫やで。奈津先生が倒れる方が
大変やから」

「…へへへ……嬉しいこと言ってくれるんやね…。…ね、膝枕、してくれん？お願い！」

「ええよ？」

ぽんぽん、と膝を叩く。

「やった、ありがと！」
嬉しそうに微笑んで響の膝の上に頭を乗せる。

「奈津先生、軽ない？」

「そうかね？普通と思いよったけど…響が強いんやないと？」
そっと響を見上げて言う。

「…………」

響はゆっくりと顔を降ろすと奈津の唇に
キスする。

「んっ……！？」
突然のことに驚き、目を見開いて響を見る。

「んふふ、ビックリしたやろ」

「そ、そりゃあビックリするやろ…なぁん？どうしたん？」
頬を染めつつどうにか言った。

「ん？何でもないよ。好きやから」

「…なんでそんなん普通に言うん…照れるやろ…」
さらに頬を染めて、奈津は響から顔を逸らすように横向きになる。

「んふふ、好きな人には甘くなんねん」

「うぅ…好いとーよ、響。そーゆーとこも…」
耳まで染め上げて、顔を逸らしたまま奈津は言った。

「嬉しいわぁ。…そろそろ帰ろか？」

響は笑った後、問いかける。

「…ん、そーしよっかね…。あ、でも…今帰ったら、雇用時間過ぎるやん…響送ってったら帰らないけんね。…ちょっと寂しい」
腕時計を軽く見て、奈津は微笑む。

「んふふ、俺も楽しかったで」

「そっか、んなら良かった。…ん、最後にさ、ぎゅってしても良いやか？」
両手を広げて、奈津は首を傾げて見せる。

「ええよ～」

響はぴょん、と奈津の広げられた
手に飛び込む。

「ふふふ…ほんと可愛かー…ずっと一緒に居れたらいいんに…」
響を大事そうに抱きしめて奈津はぼそ、と口にする。

「俺もそれがええけど…まだ、同居とか
無理やしなぁ」

「うーん…今日だけでも同ky……あ！俺ん家くればいいやん！そしたら今日だけでも一緒に居れるばい！」
嬉しそうに言いながら響の肩を揺らして言う。

「あ、ええなぁ。姉さんに連絡するわ」

響はスマホを取り出し、姉に連絡を取る。

「あ、もしもし姉さん？今日、友達んとこ
泊まるんやけどええ？…うん、分かったわ」

スマホの通話を切る。

「ええって」

「ほんと?? やったー！そんじゃ一緒帰ろーや！」
上機嫌で響の手を取り、奈津は
嬉しそうに歩き出した。

「はいよー」

「あー、でも、響が泊まるんやったら片付ければよかったぁ…散らかっとーまんまやもん…」

「あー、いけるいける。俺の部屋も
散らかっとるもん」

「…あ、ベッド一個しかない…まいっか、俺が床で寝ればいいし…あとは…ご飯やね！何食べたい？」

「ええ…一緒に寝てくれへんの？
飯かぁ。特に食いたいのはないなぁ」

「…一緒に…？…そっかー、じゃあオムライスにしよっかねぇー」
響の言葉に頬を染めては隠して。

「オムライスか。美味しそうやなぁ」

「ふふ、腕によりをかけて作っちゃるけんね！」
元気に腕を叩いて見せる。

「おお、期待しとくわー」

響は少し冗談めいた笑顔を浮かべる。

大きなマンションに到着して、奈津はいそいそと自分の住む部屋へと案内する。
「…ん、ここばい。今開けるけん、ちょっと待ってね…」
鍵を開けて響に先に入るよう促した。

「はいよー。広い部屋やなぁ」

「そーやろー？あ、荷物適当に置いていいけんね？風呂はあっち…、服は…俺の貸しちゃる、好きなの着て」
一通り説明すると、キッチンへ消えていく。

「おおきにー」

「ふふふふんんー♪」
鼻歌で気分を上げ、奈津は料理を始める。

「………………」

無言でスマホゲームのガチャを引いている。

「……んん…出ぇへんなぁ」

「……っし、完成！…響に食わせるの、恥ずかしかね…」

オムライスを盛り付けて響の待つ部屋へ行く。

「出来たばい！あったかいうちに食べりー……ん、なんしよん？」

「ん、ああ…ガチャ引いててん」

響は気付いたようにスマホゲームの
画面を閉じる。

「ガチャ？俺も引きたい！やらして！」

テーブルに夕食を置くと、奈津は響のすぐ隣へ座る。

「んん～…ええよ」

響は少し悩んだ後、スマホゲームの画面を
開いて渡す。

「やった！……ん、なんか出た！」

表示に従って画面を触るとなにかが出てきた音がする。

「お、それURのコラボキャラやわ」

響が画面を覗き込み、感心したような
声を上げる。