主 2019-02-18 16:51:22 |
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(彼が起きているとは弛知らず、黙々とペンを動かし続ける彼女。登場人物の設定は完成した、後は物語を紡いでいくだけ。それぞれの季節に纏わる話を紡いでいく、と言うのはどうだろうか。自問自答を繰り返しながらまず初めに書き始めたのは春宮 桜の物語。4人の物語を短編で紡いでいく予定らしく、最初のタイトルは『通学路の信号機』。あらすじは高校一年生になったばかりの少女である春宮 桜が入学して一週間が経過した頃。いつもの通学路、向かった先には信号機。この信号を曲がって角を右折すれば学校へと着く単純な道のり。信号を渡ろうとしたところに横に並んだとある男の影__男は何やらブツブツ呟いているのだが、何を話しているかは聞こえない。その日は通り過ぎたのだが、その日を境に毎日のようにその男に会う。男に会う度に聞こえてくるのは五十音の一字のみ。その一字を組み合わせるととある言葉になると言う、何の変哲も無い日常に少しずつ狂った何かが訪れる物語。)
「こんな感じ…かな、」
(次に夏河 向日葵。水泳部に入部した彼女はとある噂を耳にする。それは彼女の友人である女子生徒が教師と水泳部の部室で密会をしている、と言う噂。そんなことはないだろうと思いながら水泳部の部員である何人かと共にその真実を確かめようとするのだが、そこに居たのは__教師の形をしたマネキンと友人を真似た形のマネキンが踊り狂っている姿だった。マネキンの首がゆっくりと動いて…、と簡単なあらすじを書き。次に秋山 紅葉。彼の話は少し迷ってしまったものの、彼女が紡いだ物語はマンションでの出来事で。隣の部屋から聞こえてくる咀嚼音、嗚咽、壁はそこまで薄くない筈なのに聞こえてくる不気味な音色。だが、彼の部屋の隣には誰も住んでおらず__とある日、不気味になって部屋を調べた彼。不意に見つけたキッチンの横にある壁の穴。その穴の中には無数に蠢く目玉の影…、なんて自分でも気味の悪くなるものを書いており。)
「…うぅ…病んでるみたい…」
(度々漏れる独り言を気にせずに最後のストーリーを描き始める。最後は冬野 雪。異常気象のように突然降り始めた雪の日、学校の帰り道で彼が見掛けたのはひっそりと佇む神社。ピアノのコンクールが近かった彼はその神社でお参りをすることになるのだが、長い長い階段の先にあったのは古びたお社。不気味に思い、振り返って登ってきた階段を降りようとするのだが__ない。そこに、先程上がってきた階段が…ない。彼方此方に階段を探し回る彼の前に現れる謎の影と怪異に現実と夢の区別がつかなくなる…。と言う物語を一通り書いた後、チラリと彼の方を見れば立ち上がり。彼の方に駆け寄っていけば、休養を取っている彼の肩をトントンと叩いて。)
「…あ、あの…ッ…か、簡単に、です…けど…書け、ました…」
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