罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>梔
(部下は見張られていたとは知らずに男達の要求を飲むと手錠の鍵を渡して足を拘束する縄も緩めていつでも抜けられるようにする。最後に牢屋の鍵を渡して男達が逃走を遂行する際、手助けすることを約束して。
一方、仮眠室。訪れた部下を迎え入れ上半身だけ起こしベッドヘッドに背を凭せ掛け報告を聞く。そしてやはり疑わしい人物が組織内に居たことにやや表情を強張らせ、その者の名を聞いた時、信頼のおける人物だっただけに衝撃と落胆は大きくまたこの事態を招いた己の責任を悔やんで。なぜ件の部下が裏切りをするに至ったのか、様々な可能性を巡らせながら解毒薬についての忠告を聞き入れ礼を言い裏切りを測った男を注視するよう命じたころ、相手の訪問にそちらに目を向け中に入るよう目配せする。一瞬彼の目に嫉妬が滲んだ気がするのは己の不遜だろうか…。気を利かせて退室する部下に今一度礼を行って見送り、ドアが閉まりきったところで再び相手に視線を戻して「ごめんね、君も疲れてるのに呼び出して。今丁度その話をしていたところなんだ。…それで、腕はどうだった?」相手は先程の話を知っているのだろうか、知らないならすぐに話さねばと思いながら掛け布団をめくって相手と向き合う形に座り直すと形の良い、細く長い指先を手に取って掌を掬い軽く握り込む。普段よりもひんやりとしたその手に己の胸の内も底冷えるも徐にその手を口元に近づけると軽く唇をあてて「こうしたら治るといいのにね。」と柔らかく笑んで彼を見上げて。下の位置から見る彼もまた綺麗で、秀麗な瞳を縁取る長い睫毛がより映える。と、そんな浮かれも微かに感じた不審感に影を潜め、腕を取り直すと相手をぐっと近くに引き寄せその顔を真剣な表情で凝視して「…ねぇ、身体、なんともない?」と己の中の不審と焦燥が勘違いであって欲しいと願いながら声色をやや低くして問いかけて。)
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