罪 2019-01-12 17:26:13 |
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榊>>
(時間にすればほんの少しのことだろう。しかし、自分の中では永遠にも近い感覚がまだ頭の芯に残っている。随分と我儘な申し出だったということを理解するほどの理性は残っておらず、ゆっくりと、しかし確実に落とされた口付けにただただ、魅力される。この世こどの果実よりも甘い唇と、どんな嘘や脅しをもってしても揺らがない聡明な瞳。それを覆う健康的な色のふくらとした瞼と縁取り、瞳を飾り立てる長く、健気に揺れる睫毛…彼を象る全てが美しく、彼を彼たらしめる心を淑やかに飾る。「…ありがとうございます。」彼の瞼が開かれ、中に隠されていた端麗な瞳が己が姿を写すと同時にそう告げ、恭しく頭を下げる。一瞬なれど、彼を覆う神秘のベールを払い、彼を手に入れた様な気になれた。未分不相応であると身に染みて分かっているが、この僅かな時間のためなら、自分は何人だって手にかけるし、何だってこなせる気になれる。「…嗚呼…何たる光栄でしょう。この梔、再び貴方に仕える幸せを噛み締めました。」その言葉通り、この上ない幸せを噛み締めるも、自然と表情は緩み、慈しむ様な笑みを少しだけ浮かべると慌てて普段通りの表情に戻り「…とりあえず先ずは報告を」と背筋を伸ばして)
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