罪 2019-01-12 17:26:13 |
通報 |
>>梔
(バタン──と静かに扉が閉まる音から数秒後、胸のつかえと共に深く息を吐き相手が残していった資料に目をやるも視界に入れているだけで文字の羅列は頭に入ってこない。頭を支配するのは先刻までの相手の表情、声、そして宣誓。まるでお預けを食らった気分だが昨夜から蟠っていた物は随分軽くなった気がした。ただ、一枚も二枚も相手に上を行かれた気がして自分はこんなにも恋愛に臆病で不器用だったかと嘲りたくなる。昨日から格好悪いところしか見せてないな…と思いながら残った甘味を口にしてはまた先程のほろ甘い余韻が内側から広がっていき、彼の存在をどうしようもなく感じて。そんな時「ボス…お話が、」とノックと共に部下から声が掛かれば、冷めたコーヒーを一口飲み「入っていいよ。」といつもの自分に戻って迫る闘諍へと気持ちを高めていって。
夜、最小限の部隊と荷物を準じ、森が茂る山の麓へ訪れる。念の為救護班を待機させるが、アジトのある頂上付近で重症を負えば、此処まで持つかが危ういため大半は上へ向かう者たちで補わねばならない。ただでさえ立ち打つ敵は大きいのだ。現場の空気は張り詰め重たく、それに比例するように森は陰鬱とし心に不穏の影を落とす。どんなに暗くても潜入を悟られるのを避けるには明かりも極僅かしか使えないため、その暗さが余計に不安を煽るのだろう、表情を強張らせる部下に気付けば「ほら、今からそんな肩に力が入ってたら身が持たないよ。」と緊張を解すように肩を叩き、笑みを浮かべたのを確認した後、相手の元へ行き「よく眠れた?」と目元を覗き込むように微笑み問いかけて。)
トピック検索 |