アナタはどうしてここに来たのですか?
アナタの大切な人は誰でしたか?
アナタの幸せは何でしたか?
アナタの願いは何でしたか?
アナタは何故ここにいるのですか?
アナタの未練を教えてください。
とある喫茶店で20を越えたばかりのような青年は、静かに笑う。それは見た目に反して老熟した雰囲気を纏っていた。
「我々には時間はたっぷりありますから。どうか焦らず、ゆっくりと語ってください。
アナタは何故、亡くなったのです?」
悪霊、怨霊、浮遊霊、憑依霊。様々な思惑を抱き生涯を閉じるも、輪廻の輪に乗るには想いが強すぎる者達が住む世界、__町。
24時間、365日雨が降るその町は、亡者の住処と呼ぶべきか、はたまた檻と呼ぶべきか。
亡者が唯一、生前と変わらず生活できる場所。
そこは亡者本人が作り上げた空間を居住とし、亡者同士の作った食事は生前と何ら変わりなく楽しめる。
現世に降りることができる亡者も、1日の終わりには気付けばこの町に引き戻されてしまう場所。
それが__町。町の名前は誰も知らない。きっと知ってもその名前を口にすることはできないし、そもそも重要ではないのだ。
この町一番の古株の喫茶店の主人の青年は言った。
「生者のような戸籍があるわけではないですからね。…それに、知っても意味はないかと。
だって私達はこの想いを消せない限り、どこにも行けないんですから」
何らかの未練により成仏できずにいる幽霊が集まる町の物語。ここでどう過ごすのかは、その人(霊)次第。