くらくらげ 2018-09-17 19:36:49 ID:ccd5a0773 |
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なんか書こー
「金魚鉢」
おばあちゃんの家には何もいない金魚鉢がある。
なにもいないのにおばあちゃんは水と水草を入れたまに水を変えている。
私はそれが不思議で仕方がなかった。
一度おばあちゃんに理由を聞いてみたが、おばあちゃんは微笑むだけで何も答えてくれなかった。
昨日、おばあちゃんが入院した。
理由は骨粗しょう症による骨折らしい。
「おばあちゃん魚嫌いだったからな」などと思いながら
お見舞いに行くと、
「金魚鉢の水を変えておくれ」
とおばあちゃんは言った。
「なんで」
と私が聞くと、おばあちゃんはぽつぽつと話し始めた。
「私が十七、八歳くらいの時かな、私が住んでいた村の近くを通りかかった商人が
「人魚の肉」っていうものを売っていたの。
その時の私は食い意地が張っていてね。新しい食材への好奇心もあったのかそれを買ってしまっ
たの。
その時、私は一人暮らしをしていたから一人でそれを料理して食べたの。
異変に気付いたのはその日のお風呂の時だったわ。
ふと、「腕がかゆいなー」と思ってかいてみるといつもの腕にはない異物が腕にあったの。
びっくりして、腕を見てみるとうろこが生えていて、心なしか苦しくなってきたの。
急いで湯船につかると楽になったわ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ってことはおばあちゃん人魚になっちゃったの。
あ、でも今は鱗見えない。どういうこと。」
「焦らなくていいわよ、全部話すつもりだから。
それでね、怖くなった私は徳の高い僧の方に来ていただくことにしたの。
あ、もちろんその時はさすがに水の中にはいなかったわよ。
ちょっと苦しかったけどね。
その僧さんは私の鱗を見たり、人魚の肉の話を聞いてから、
あの金魚鉢を渡して、私にこう言ったの。
「あなたの腕にある鱗は毎日抜けます。それをこの金魚鉢に入れてください。
そして、1週間に一回水を変えてください。その時に鱗は絶対に捨てないようにしてください。
それを、そうですね、70年ほど続けていればそれは収まると思いますよ。
70年後私が生きているかは分かりませんが、70年後にまたその金魚鉢をもって
このお寺に来てください。
私の弟子か、私が何とかして見せます」
おばあちゃんはここまで話すと「ふぅ。」と息を吐いて私に向かって言った。
「それでね。ちょうど明日で70年目なの。でも私は今入院してるでしょう。
だからあなたにやってほしいの。大丈夫よ。
その僧さんに「ほかの人がやってもいいのか」。と聞いたら。「大丈夫」と言ったから。
それで、水を変え終わったら、このお寺まで行ってちょうだい。」
そういうとおばあちゃんはくしゃくしゃになった紙を私に渡してくれた。
「大丈夫よ。怖がらなくていいわ。どうか、お願いね。」
おばあちゃんにそんなファンタジーな過去があったのには驚きだが、なにより私が最後の作業を
しなければならないというのが一番驚いた。
でも大好きなおばあちゃんの頼みだ。やらなければ。
その翌日、私は早速作業に取り掛かった。金魚鉢の中に鱗を入れ、
たくさんの鱗を出さないようにしながら、水を出す。
そしてきれいな水を入れる。
あっけなく作業は終わってしまった。
あとはこの金魚鉢をあのお寺に持っていくだけだ。
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