語り部 2018-09-08 13:28:04 |
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>Isabella
此れは此れは…御機嫌如何かな、フロイライン――相も変わらず、君は憎い程華やかな目覚め方をする。
(目を閉じ、思考を止め、夜闇の中へ溶け込まんとする安寧は彼女の目覚めと共に迸る魔力の気配によって掻き消える事となる。今や己の肉体は、枯れた魂を未練がましく宿すだけの器に過ぎず、そしてその器は他でもない彼女の魔力によって保たれるもの――だからこそ、こうして彼女が目覚める瞬間にはまるで共鳴するかの様に己の肉体が騒めくのだ。気に入りの座椅子をギイ、と静かに軋ませながら立ち上がり、例の"施し"を必要とする時期が近い所為かいつにもまして気怠い体を引き摺って向かうのは月明かりに照らされる華奢な少女の体が佇むその地点。ひらり、ひらり、最後まで宙を待っていた花弁の最後の一片が視界から消えた頃、鼻から抜ける微かな吐息、あまりに露骨な皮肉を含んだ笑いと共に目覚めの挨拶を贈ろうか。一歩バルコニーへ踏み出せば、容赦無い雨粒が襲いかかって来たが二歩三歩と踏み出す足に躊躇いはない。濡れた衣服がゆっくりと身体に張り付き、痩せこけたその体のシルエットを少しずつ浮き上がらせながら必要な分だけ距離を詰めた所でまたぽつぽつと言葉を紡ぐ。月明かりの青白さにさえ勝る青白い顔には、最早彼女の魔力無しにはどうする事も出来ぬ窶れの色がこれでもかと刻まれていた。)
悪くない月だが、其処が月を眺めるに相応しい場所とは思えんな…さあ、中へ戻ろうではないか――生憎、其の手を取りエスコートする余力が無いのは口惜しい限りだがね…
(/初めまして、牙折れの吸血鬼の背後で御座います。早速では御座いますが、絡み文を拾わせて頂きました。小さな身体に何者をも圧倒する絶大な力を秘めて生まれついてしまったが故、魔女様が心の内に抱える悲しみと孤独に何らかの形で寄り添う事が出来ればと思いつつ、こうして関われる時を楽しみにお待ちしておりました。何処までも陰鬱な洋館の主、魔女様の力に依存して生きる身では御座いますが、何卒宜しくお願い申し上げます。)
>Agamemnon
何を言う…今、其の答えを知り得る者は此の洋館にたったひとりしか居ないと言うのに――嗚呼、然し、君がもし答えを知っているのなら今は未だ言わずにおいてくれたまえ。我輩もいずれ、此の目で確かめる事になるだろう…無論、其の時は他でもない、君に手を引かれている筈だが。
(一体何時から其処に居たのか、彼は己の存在に気が付いていたのか。ともあれ、ひんやりとした夜闇の中に立ち込める静寂をそっと破いた低音は何やら物思いに耽る彼の其の鼓膜を揺らしただろうか。カツ、カツ、カツ…此の世と彼の世の境目で頼りなく揺れ、宛ら蝋燭の火の様に弱々しく曖昧にぼやけた己の存在が今は未だ辛うじて此の世で存在する事を許されているのを無意識下に主張するやや強めの足音と共にゆっくりと彼との距離を詰めた。夜風に靡くローブを眺めるのは酷く虚ろな眼差し、唯でさえ調子に波のある男ではあったが、今宵はどうやらあまり良い気分では無いらしい。微かに持ち上がった口角は一見笑みの様なものを形作っているようでいて、実際はもっと、空っぽの表情を成しているに過ぎない。癒えぬ渇きと憂鬱さだけが重たく伸し掛る体を引き摺って、それでもたった独りで夜を明かす不毛より誰かと言葉を交わして過ごす不毛を選ぼう――そんな身勝手さを例によって隠そうともしないまま、視線の先に捉えた彼が此方を振り返るその瞬間を待ち)
(/初めまして、牙折れの吸血鬼の背後で御座います。早速では御座いますが、絡み文を拾わせて頂きました。死という安寧を唯一齎す事の出来る存在、底無しに沈みゆくばかりの吸血鬼がその存在に何処かで依存してしまうのは言うまでもありません。嘗て愛深き生を生きた吸血鬼が如何にして死神様の心に寄り添う事が出来るのか、これからの物語を楽しみにしております。只管に暗く陰鬱な館の主では御座いますが、何卒宜しくお願い申し上げます。)
>ALL
――…、
(青白い月明かりに照らされるテラスにひとり、憂いばかりを只管に欲張って今宵も泥濘の様な救いようの無い気分へと沈み込んでゆくのはこの館の主。つい今し方、指の先に摘んで口の中へ放り込んだ大振りの葡萄一粒をゆっくりと咀嚼している。ぷつん、と弾ける様な実の弾力と溢れ出す果汁の瑞々しさ、酸味より遥かに勝る贅沢な甘み――本来"美味"と評されるべき葡萄の味を堪能している筈が、浮かぶ表情から陰りが消える事は無い。それは、何故か。本来血液を糧として生きる種族、必然と最も美味たる味は新鮮な人間の血液の中にある。然しながら、今の己にとって、その味は最早味わう事の叶わぬもの。血液以外の物を前にしては殆ど無いに等しいと言っても過言では無い、吸血鬼特有の味覚を残したままの己には、どんなに上等な葡萄であろうとも、それは幾ら咀嚼したとて砂を噛んでいる様な虚しさと不快感を残すばかりなのであった。嗚呼、嗚呼、もううんざりだ。そんな叫びが喉元まで出掛かり、堪らずぐったりと椅子に体を預けながら夜空を仰ぐ。こんな日程、月も星も美しく瞬くのだ。己の惨めさを嘲笑うかの様にきらり、きらり、と輝く星々を空っぽの眼差しで見詰めながら、虚空に小さく吐息を漏らして)
(/皆様初めまして、牙折れの吸血鬼の背後で御座います。御覧の通り、何処までも暗く陰鬱なばかりの情けない主では御座いますが、館に集う住人達との心の交流を楽しみに絡み文として投下させて頂いた次第です。もし宜しければ、お手隙の際にでも拾って頂けますと幸いです。他の参加者様も書かれておりますが、何か展開のご希望など御座いましたら御遠慮なくお申し付け下さい。それでは、何卒宜しくお願い申し上げます。)
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