【〆】劣等感を沈めて

レトルトより酷い味だったら俺はどうすりゃ良いんだよ
(不機嫌そうな表情を崩さず、また褒め言葉を真っ直ぐに受け取ろうとはせずそんな風に目をそらしながら返答をする。料理だけは自信が結構あるのだけれど、と絶妙な辛さのカレーをスプーンに乗せて少し眺めて。ぼんやりと下らない事を考えていると貴方の笑い声の混じった言葉が聞こえてきてちらりと視線を戻し。)
……お前が倒れたら病院に着いてく羽目になるのは俺だからな、そのへん覚えとけよ
(着いていかない、とかいう選択肢は頭にない。我ながらなぜここまでするのかはよくわからないが、とにかく放っておく気にはなれなかった。もしかしたら、才能ある彼がサッカーを続けられなくて、自分みたいなのがサッカーの名門校でエースを張っているのを理不尽に感じているのかもしれない。俺だってサッカーは好きだし、エースでいられなかった頃は嫉妬だってしたけれど、いざこんな状況になるとそれはそれで苦しいものがあった。つらつらと考える。人との会話を無視して長考するのは割といつもの事であり、今回もそうである。思考に耽っていたせいで相手の言葉を聞き逃したのはわかったが、聞き返すのも癪だ。「ごちそうさま」と言いながら相手も食事を終えたのを確認して立ち上がる。自分と相手の皿を回収にお盆に乗せて台所に戻ろうとして)