あかつき 2018-08-01 17:39:01 |
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一時間程だったろうか…見た筈のページに文字が浮かんでいて、更には一ヶ月前に死んだ祖父、そして俺の事まで書かれてあった。
そんな不気味な本を、ただただ睨み付けていた。
『あの…スミマセン。純文学はアリマスカ?』
と、不意に妙なイントネーションに俺は顔を上げる。
見ればアメリカ人だろうか?癖っ毛のブロンドに灰色っぽい青の目、少し体格の良い屈強そうなのに間の抜けた顔立ちの外国人男性の姿があった。
「…っ!あ、純文学ですね…えっと確か、一番奥の左端に置いてあったと思います。」
一ヶ月もやっていて未だ把握していない場所があるというのも何だが、何せ本なんて生まれてこのかたあまり読む機会なんて無かった。
まあ、漫画は別だが。
『左ノ奥?アリガトございマース!』
外人なのに、純文学読むのか…スゲェな。純文学ってぇと、芥川龍之介とか夏目漱石とか…だっけ?
ああ、そういえば少し前に日本のコメディアンも純文学出して、映画化までされたんだったか。
店の奥から、何とも陽気な鼻歌が聞こえる。まあ、どう考えてもさっきの外人だろう。
「楽しそうだな。本が好きなら…こういう店って興奮するんだろうな。」
何せ、下手をしたら大正時代やそれよりも前の文献の様な物まで取り扱っている始末。買い取りを頼まれた時も、本当にこんな物が売れるのか…何て考えている。
まあ、祖父の教えが無けりゃ…きっと買い取りなんてしていない。
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