店主 2018-07-28 21:51:33 |
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元気にしているかい?僕の方はなんともない。君のそばを離れても、こうして文章を並べるくらいは平気さ。物語の一冊も送り届けていないし、これだけじゃつまらないかなと思うけど読み終えてくれたらとても嬉しい。
あらかじめ教えておこう。本来、僕はこの部屋から鳩の脚に手紙を括りつけるべきじゃないんだ。もっとちゃんとした、専用の場所がある。そうしなかった理由はどうしても僕の意思を伝えたいけど、それと同じくらい気付かれたくないから。そういう矛盾した気持ちから来ていてね。あまり理解出来ないようならば、そのままでいて。変に考えなくて構わない。
こうして書き進めていると、昔を思い出してしまう。初めて君に出会った日のこと。僕の色素の薄い目に比べて、鮮やかな青色をした虚ろだけども綺麗な両目。本が大好きで、何度も読み聞かせしてほしいとおねだりしていたね。自分だけで読める文字は増えたかな?ああ、そうだ。この手紙でも難しく感じる部分があれば誰かへ訊くように。僕じゃなくても、頼れる相手はもう他にいるだろう?
……ずっと、あの頃みたいな二人だけが共有出来る日々が続くと信じていた。でも、どうやらそうはいかないね。実際、「関わり」が糸を切ったように前からなくなったんだから。その糸とやらを切ったのは、紛れもなく僕なんだけど。加えてせっかく君が与えてくれたチャンスを捨てたなんて、最低だ。
まあ、君には既に友達がいる。優しい大人も勿論ね。だけど、あまり喧嘩はしちゃいけないよ。お互い仲が悪くなって溝が深くなるのは決して良いこととは言えない。それに、ついつい僕が可笑しくなってしまいそうだよ。
最後の最後に、今までありがとう。そして、ごめんなさい。我儘と本心をこぼすならもう一度だけ会いたかった。これはおとぎ話でもなければ図鑑ですらない。ただの手紙。君と同じような人間にはなれない、僕からの手紙。返事は書かなくていいし、捨ててもいい。それじゃあ、さよなら。
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