ヴァンパイア 2018-07-19 17:51:28 |
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(肌を刺す様なぴりつく警戒心を纏う青年は何処と無く浮世離れした端麗さを持っているように思えた、ただ酔っ払う為の道具として仕入れて来た味何て有って無い様な安いビールの入るビニール袋は適当に床に落とし、確認と言ったっきり電話に向けて喋り続けるその姿を眺めては無意識にそんな観察をしてしまう。物の数分、と言った所だろうか。電話を下した彼の目は口ほどに物を語っている。俄かには信じがたいが、現実は小説より奇なりと言うのだ無いとも言い切れない。飽く迄、平静を保った表情のまま茶化す軽い口笛をヒュウと一吹き、「なんだ、やっぱり此処は美人付きの部屋だったのか」わはは、と豪快に笑い声を上げて場を和ますように調子の良い発言を噛ますのは生き抜く術の一つだ。やれやれ、ともっともらしく肩を竦ませて頭を左右に振れば「名前を聞いて良いか、美人さんよ。……、俺はリコリス。大方ダブルブッキングっつう所だろ、まァこれも縁の一つ。新居が決まるまで宜しくやろうや」幸運にもこの部屋の間取りから行けば個人部屋は確保できたはずだ、なら美人相手のシェアハウス。そう悪い物では無い。考え方を切り直せば無骨な手を差出し握手を求める。もっとも目の前の美人は依然変わらず苛立ちを構えているのだから、それが叶うかは分からない。少なくとも大雑把な思考は思いがけない同居生活を受け入れてしまっているのだから。)
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