吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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…………そう、だったのか。死に至る病、か……それで医者を志したんだな。それが、俗世への未練でありお前の唯一の夢か。俺としては、誰かの為ではなく、自分の為に夢を追って欲しいところだが……これはお前の問題だ、俺が横槍を挟むことではないな、すまない
(二度も大切な肉親を亡くし、そして目の前で命の灯が消える瞬間を見せられれば、トラウマにもなろう。吸血鬼は人間と比べて親兄弟の概念が薄く、ラザロ自身も誰か特定の存在に入れ込んだことなどなかった為、ハリーの気持ちを完全に理解してやることは出来なかった。価値観の違いに、どうハリーに言葉をかけていいか悩んだが、それでもラザロが一つだけはっきりと思っていることを伝える。このままでは、ハリーと死別した彼の絆は呪いのまま終わってしまう。それで形だけ医者になったとて、彼は戻ってこない。待っているのは空虚な結末だけなのではないかと危惧するが、それもハリーの人生か、と、あくまで彼の選択を慮って)
ふ……、だろうな。尤も昨日の段階ではこの話をするつもりはなかったし、いくら飢えて弱っているとはいえ、人間に殺される気はしないが。……お前の正体が聖職者や吸血鬼狩りなら話は別だがな
(冗談ぽく笑うハリーにつられるようにして、ラザロも微かに吐息混じりに笑った。ラザロがこの話をしたのは、ハリーが自分を殺せないと考えたからではなく、もしも彼が心から望むのであれば、自分の命を擲ってでもハリーをここから出してやりたいと思ったからだ。だが彼にはそのつもりはないらしく、念のために弱点はまだ秘密にしておこう)
この屋敷内で起こることの全てを、あれは知覚しているだろう。あれの機嫌を取りたいのであれば、俺が諦めてあれのものになると宣言するか、あれの思惑通りにハリーが俺に血を捧げるか……その二つしか選択肢はないだろうな。唯一幸運なのは、あれが肉体を捨てたことだ。おかげで俺達に直接干渉してくることはないだろうが……油断禁物だな
(魔女を懐柔できればどれほど楽だったか、とラザロは溜息交じりに話し始める。そもそも自分の命を捨ててまで相手の意思を無視して監禁にまで踏み込む女だ、一般常識が通用する相手ではない。道徳や美徳云々も、一笑に付されるだろう。既に死んでしまっているため、金や美食での交渉の効果も見込めない。だが、肉体がないことがこちらにとってメリットとして働く場合もある。ただ、屋敷そのものが魔女であるという現状に変わりはないので、慢心すべきでないとラザロは目を伏せた)
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