吸血鬼 2018-06-27 00:10:52 |
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……それは、例の人間が薄命であることと関係があるのか……?
(ハリーが心の底から恐れるのは、人間関係そのものではなく、築き上げた関係を一方的に失ってしまうことなのだと知り、ラザロは一層悲しげな表情を浮かべた。人間はすぐに死ぬ生き物だとハリーの会話の中で知ったばかりで、ハリーは過去に大切な存在との死別を経験しているのだと内心で確信にも似た推測を持つ。彼の傷を抉りたくはないが、それよりも、彼の気持ちをより深く知り、痛みを知ったうえで傍にいてやりたいという気持ちが勝って)
…………いい、無理に喋るな。辛かっただろう……、お前はよくやっているよ
(絞り出すように言葉を並べ、これ以上感情があふれ出すのを躊躇った様子のハリーに、これ以上は喋らなくてもいいと優しい声音で告げる。彼から身を離したが、自分はどこへも行けないから大丈夫だと言わんばかりに、今度は彼の頭を数回撫でて)
ああ、気にするな。……俺が初めて魔女と会った時、それは紛れもない偶然だった。その場で俺は、魔女に求婚されたんだ。だが当然、それを突っぱねた。それ以来、魔女に付きまとわれることになったが、その度にうまく躱して逃げていた。そうしている内に数十年が過ぎ、俺は久しぶりに人間の女の血を飲んだ。それを魔女が目撃した途端、激昂した……あれはとても、嫉妬深かったんだ。魔女はその場で自分自身と俺に呪いをかけ、その代償として命と肉体を捧げた。その呪いが屋敷を形成し、俺を中に閉じ込め、誰も俺に接触できないように孤独の呪いもかけた。魔女の意識は、未だこの屋敷にあるのだろう。だから俺はこの中で自害することも、抵抗することも出来ない。ここから出る方法が死しかなく、自害できないのなら、血を一切吸わずに緩やかに餓死するしかない……それが事の顛末だ。だが言った通り、この呪いは俺を一生閉じ込めておくための場所。俺が**ば、呪いは解けるだろう。だから……お前が俺を殺せば、お前だけは屋敷から解放される
(ぽつりぽつりと、真相を話す。魔女との出会い、そして一方的に魔女に魅入られてしまったのが究極の不運であり、魔女は異常なまでに嫉妬深かったのだと。昨日の手記に、“もしハリーが女であれば殺されていた”と書いたのは、そういう意味だった。こうなってしまえば、ハリーがこの屋敷に入れてしまったことも、偶然ではなく魔女の思惑だと言えるのかもしれない。ラザロを餓死させたくない魔女が、男の血ならいいだろうと、ハリーを屋敷へ誘導したのやもしれない。だがそれより重要なのは、ハリーをここから解放してやれると思われる方法のこと。ラザロは心臓のあたりに温かい体温を感じながら、恐れも躊躇いもない目でハリーの瞳を見つめて)
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