匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
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「お兄さん、分かっているじゃん」
(相手から銀貨を受け取れば、男は器用に片手でそれを一回跳ねさせ、一層にこやかに笑い。この手の路上案内人は、渡された金額に応じて教える情報のグレードを変えるものだが、その素振りからして相手が提示した金額はそれなりに満足のいくものだったようである。男は、立ち位置的に自分さえいなければ、相手の肩でも抱いてきたのではというぐらいに親しげな様子で、一緒に歩きながら、街の簡単な歴史、最近の情勢、治安、どこに何があるかを無難に語り始め、それら基本的な話が済めば、頃合いも丁度良く、飲食店の立ち並ぶ区画に辿り着いており)
「お昼、一緒にどうだい? 何なら午後は裏通りのことを案内するよ」
(案内中から、話しかけるのは相手ばかりで、どうやら自分のことは頭数として認識していないようである。まぁ、珍しいことではない。当人としてはぞんざいな扱いには慣れているし、あるいは、客観的な視点を持つのであっても、相手と当人の関係性は、流浪の人間がたまたま拾った少女を売ろうとしているか、奴隷として引き連れている、ぐらいに見えるのが然りで。二人とももっと上等そうで手入れの行き届いた服を着ているか、あるいは、この街中でも勝手知ったる風情で堂々としていれば、他の関係性だって連想されるだろうが、相手の格好は如何にも旅人であり、自分の衣服ははっきり言って薄汚れている。さらに、相手は "さぁ、これからどこに行こうか…" という雰囲気で辺りを伺いながら歩いていたわけで、自分は都会慣れしていない挙動を丸出しに、その相手に付いていたのだから。
……主人と奴隷のペアであれば、主人の方にばかり話しかけるのは当然だろう。案内の話ぶりからしても、男はやや胡散臭いながら愚かには見えず、となれば、考えなしに襲いかかってきたり、多少の得が見込まれる場合でもハイリスクな獲物に執着したりするタイプにも見えず。……自分には話しかけてこない割りに、ふとした隙に部分部分で品定めしているような瞳は何度も感じたが、さりげなく此方も男の様子を観察していたところ、男は相手にはそのような目を向けていなくて、むしろブローカー仲間みたいに見なして敬意を払っているようにさえ思え。大方、食事についていっても安全……だが、自分はここまで一切無言、仏頂面で通していたわけだし、今さら何かを言う気もなく、服の袖だけをずっと掴んでいる相手に判断を任せるつもりで、一方的に眺めていた男から視線をそらし)
…………………………。
(/そんなに褒めて下さるのは、背後様くらいですよ--* こちらこそ、いつも分かりやすくて繋げやすいロールをありがとうございます☆)
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