赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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(初対面の年上の男に誘われて嫌な気こそすれいい気はしないだろう、と考えが至るまでは常識を持っている。出過ぎた真似をしてしまったと喉を通り過ぎた言葉に苦々しい表情で口角を落とし、勝手に想定する彼女の冷ややかな反応に心臓をギュウと縮こませて。そんな被害妄想が杞憂に終わるまでに時間はあまり必要とせず、彼女が誘いに乗りかかってくれれば剰え自分が卑屈になってしまわないように続けられた言葉に甘える事が出来た。委縮していた心臓が再度安堵に緩めば「……帽子屋ん所のアリスをおざなりにはしねぇよ。責任もって最後まで案内するから───あ゛ー、その。なんつうか、え゛ぇ゛っと、……よろしく。」茶目っ気のあるその表情は正に名の上がるその人物を頭の片隅に連想させた。気さくな雰囲気に浅く顎を引いて軽く頷いて承諾すれば改めた挨拶を紡ぎ、くはと小さく息を吹き出す様に軽く笑って見せれば自然と表情は綻んで、目元がくしゃりと細められると目尻の皺が少しばかり濃く刻まれ「お前、帽子屋ん所のアリスって感じすんなァ。……似てる」気さくな空気も、人を気遣えるその温かみも、自分にとって好ましい友人が持つそれに似ている。彼女と足並みを揃えるように足を踏み出せば賑やかな遊園地を後にして鬱蒼とした森へと進み、「行き先は涙の湖だけど、行った事は有ったかァ」長い髪を揺らす様に頭をクイと肩口に寄せて浅く傾けつつ語尾を上げる様な声色で問いかけながら、自身にとっても久しぶりに向かうその場所であるそこを頭に浮かべ「俺は久しぶり。あんまり出歩かねェんだ」と話題提供不器用ながらに折角誘いに乗ってくれた彼女の優しさを無碍にしてしまわぬよう言葉を並べて)
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