赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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(選んでいいと言われればその言葉の魅力に堪らず無意識のうちにも目は生き生きと輝きを持ってしまう。自分の作った衣装を、端麗な彼女が身に纏うその約束がされたのに我慢など出来る訳もなく次第に唇は綻び眉間はほんのりと少しばかり持ち上がる。頭の中には作り上げた衣装がずらっと並び、黒いフリルをたっぷりとつけた事でハロウィンらしさを持った赤頭巾の衣装、オレンジと黒色を基調として作ったパンプキンウィッチの衣装は彼女のすらりと伸びた手足が強調される、ぱっと浮かぶだけでも着せたくて仕方がない仮装が後を絶たず。その中では、っと一番しっくり来たのは今季一番の力作ながら力作ゆえに手放すのが惜しくなってしまっていた一着の存在で。力強さを持った笑みを口元に浮かべれば「任せてよ。アタシがアンタの事を国一番の美人に仕上げるからさ」正に自信満々、そう言うように部屋へ案内した後に披露する衣装を楽しみに隠し。駄目で元々、断られても仕方がないと持ち掛けた誘いを承諾されれば喜色に目尻を細くして「アンタ鏡見た事ない?アンタが似合わない服が有るなんて言うの謙遜しすぎて嫌味になるわよ」アハハと吹き出す様に笑い声を上げればゆるりと頭を一度左右に振り、一呼吸を吸い込んで「それくらいアンタは綺麗だよ」その一言は嘘でも冗談でも軽口でもない。だからこそ確りと感情をこめてちゃんと向き合い伝える様に言葉にし。自分の好きなものを紹介する、伴っては自分の事を知って貰いたい、そう感じるのは彼女が自分にとって"自分が見つけたアリス"と言う特別な括りに存在するからだろうか。自分の好きな物を彼女にも好きになって貰いたい、自然とそう考えればこそ「食べてみて、美味しいんだから」と浅い頷きを一度行いながら感想を待ち。帰って来た家、扉を開き中に入れば一階こそリビングにダイニング、少し離れてキッチンと有り触れた間取りにて広々と続いている。それらをまっすぐに通り過ぎて階段を上がれば伝えていた綺麗じゃないが顔を出し始め、階段にはペンキをやら絵具やら墨やらといくつも染みになるように色が落ちていて時折引掻いたような傷が残っている。そんな階段を上り切れば幾つかの扉を超えて一番奥の扉へ手を伸ばし「此処がアタシのアトリエなんだ、色々落ちてるけど気にしないで」とその前置きに倣うように開いた先は布の切れ端やら糸切れ、さまざまな大きさの定規やらリボンにフリルと使いさしが落ちていたりトルソーが倒れていたりの惨状で。そんな中で自邸が好きだと言われれば嬉しさに微笑を強め、そうして驚いた。自分から誘うよりも先に此処に残ることを伝えられればパチリと戸惑いの瞬きを数度浅く繰り返して「え。それは───勿論、良いよ。大歓迎、でもさ城みたいに良い暮らしはさせてやれない」自分にとって特別なアリスである彼女なのだから遅かれ早かれ誘うつもりでいたらしい。先手を打たれれば安心する半面で生活能力の低さゆえの不安が浮かび「それでも良いなら、アタシもアンタがいてくれるほうが良いな。可愛い女の子が家にいてくれるなら今まで以上に仕事が頑張れるからさ」先の反応で彼女に不安を与えたくなかった。だからだろうかパっと切り替える様に少しだけ頭を傾け巻かれた髪を揺らし顔を寄せ、ぺちと優しい手つきで彼女の柔らかい頬を撫でる様に叩いて、今度は自ら誘いの言葉を送り)
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