赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
通報 |
>帽子屋
(話が長くなりそうな雰囲気。相槌ひとつ打つのも許さない、そんな気がした。彼か彼女が紡ぐ言の葉は、どこかで聞いたことのあるような物語の一部のようで。笑みを浮かべていた表情は消え、手元にあるサイコロを緩く握るようにしながら弄り、目を伏せ頭の中を整頓する。此処は病院でもなければ、元々居たクニでもないらしい。そして、此処に住んでいるであろう人々は自分のことを“アリス”と呼ぶ。サイコロを握る手に力が入る。嗚呼、なんて面白そうなのだろう!パチッと開いた瞳はキラキラと輝いて「アリス…アリス。いい名前やわ。赤の女王になるかどうかはわからんけど…でも、あそこから連れ出してくれたんや。感謝こそすれど、怒ったりはせぇへんよ」自分の本当の名は忘れた。だからテキトーに付けた。でも、その名を名乗らなくとも此処では過ごしてゆけるのだ。元のクニに帰りたいなんて誰が思うのだろうか、否、普通は思うべきなのだろう。だが、真っ白で窓もない閉鎖的な部屋に閉じ込められるより数百倍も良いに決まっている。だから──、彼か彼女との距離を詰める。味方と言いながら肩を落とす彼か彼女の手を左手で取りぎゅっと握れば「帽子屋さんって言うのな?もっと此処のコト教えてぇな。そない悲しい顔より、さっきのような美しい顔の方が好き。やから、笑って?うぃんく…やったか?もっかい見せて?」顔を上げ不安を微塵も感じさせない笑顔を向け強請る。彼か彼女はきっと心の優しい人なのだろう、大丈夫。自分は大丈夫だから。その気持ちが少しでも伝わればいいと左手にとった手の温もりを確かめるようにギュッと握りしめて「あと、出来れば靴とか欲しいなァ。稼げるとことかあるん?」部屋の中から突然外への移動で足元はスリッパ。ブーツ型とはいえ心許ない、靴が欲しいのは本音だが、少しでも気が紛れればと思い首を傾げて)
トピック検索 |