赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>芋虫
(どうしたものかと考え込んでいる所に突然頭上から降ってきた溌剌とした声に、それが誰かを考える間もなく見上げれば一度顔を合わせた事のある人物がそこには居て。太陽の日差しに被り眩しさから薄らボヤてはいるが、鮮やかな緑髪とそして何より人好きのするあの態度。細めた双眸の上、更に片手で庇を作りながら零した「芋虫さん…」といった呟きは、彼の勢いに圧倒されて小さなものになってしまったが。此方の返事も聞かぬ間に駆け出した彼を、若干置いてけぼりの感で待つこと僅か数分。目の前で激しく肩を上下させる彼は何というか健気の塊とでも言おうか。心配と困惑とを綯い交ぜにし、対応に困り伸ばしかけた手を宙に浮かせた儘「大丈夫かい?」と眺めていて。然し心配無用と言わんばかりに力強い笑みが向けられてはスロット全開のジェットコースターにでも乗った様な心地がいっそ清々しく、一瞬面食らった様に黙り込んでから、珍しくその陰鬱さを除いてくしゃりと眦細めれば破顔しよう。「ええ、変わりありせんでしたよ。君は確かに元気そうだ。お陰で私まで何だかパワーを分けて貰ったような気がするよ。帽子屋さんには黙って出てきてしまったんだがね。ちょっと…そのお菓子作りの本があるだろうかと探しに来まして」背中を叩いて気安く接するそれは普段であれば自然に距離を取る所だが、どうにもその機会が掴めぬまま肩を竦めれば黙って好きにさせつつ疑問に応える様に同伴者が居ないことを説明し。視線を下げてやや言い淀んでからその理由とも成り得る今日の来訪の理由を口にして)
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