赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>悪魔さま
(このちっぽけな命を救ってくれた、あまつさえ見返りも求めずに居場所を与えてくれた翼の彼の名が何度も眼前の彼の口から飛び出してしまえば不思議な暗示にかかる心地で。正確な判断力を失わせるにはあまりに効果覿面で、はっきりした拒否を紡げないまでも心の奥底にある想いだけは見失わないまま顎を反らせてじっと彼を見つめ「ひなとは……、グリフォンさまが待つ家に、ただいまがしてぇんです」迎えに来てもらうような手間をかけるでも、他人のいる場所で偶然出会うでもなく、彼と自分だけの空間に。拾われて一晩で随分立派な帰巣本能が育ったもので、それを披露するのに精いっぱいで遊園地の先約については言葉巧みに論点をすり替えられた事にも気付かず、けれど違和感だけは残るまま是とも非とも言えず打掛の袖をぎゅぅと掴んで下唇を噛み。そうしてぐりぐらぐるり、揺れ動く思考回路がまともに仕事をせぬうちに丁か半かを問われれば、渇いた喉がカヒュと音を立て「__なして旦那様は、こないにひなとへ構うてくださるとですか」押し付けられた名前であることに変わりはないが、ここへ来て日が浅い分まだ馴染みの深い名を文字られればそれだけで未成熟の心は揺れる。この勝負、自身に勝ちの目がないことは根拠なしでもひしひしと実感できて、ならば負けを認める材料が欲しいとコインを隠すように彼の手の甲へ冷えた自分のそれを重ね「グリフォンさまは、ほんまに旦那様んとこへ来はりますやろか?」乞うような、そんな儚い光は夕焼けに震える。もし無断外泊をすれば、彼はどう思うだろう。アリスは自由だというのが彼の論、それに従えば放っておかれると考えるのが妥当。けれどぶっきらぼうでも暖かい彼の事だから、本調子ではない翼を酷使して自分を叱りに探し回るかもしれない。眼前の彼を真っすぐに見つめるけれど、その視線の向こうに在るのは雄々しい翼のシルエットで「こん後はえぇです。今だけは、嘘吐かんとって」一歩距離を詰め、空いている手で美しい弧を描く唇にゆっくりと触れようと指先を伸ばし)
( / すみません、挨拶を送ったつもりがコピペし損ねていたようです。連日お邪魔してしまい大変恐縮ではございますが、主様さえよろしければ今夜も素敵な世界へ浸らせて頂けますと幸甚です。何卒、宜しくお願い致します。 / 深礼)
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