赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>ムカデさま
(きっと彼は森の神様だ。科学文明が芽吹く前の時代から来た身から見れば、森と調和し悠々と佇む姿に神秘性を感じずにはいられない。おまけに腕は6本、人間離れした静かな美しさ、あまり多くを語らず沈黙を纏う姿も少年の邪推を助長して。優雅にかぶりを振られてしまえば、苦労して捕まえた供物には何の価値も無いと見做されたのだと誤解し「んぇ、」がびン、そんなオノマトペが似合う絶望の表情。力なく薄く開いたままの唇からはちょこりと犬歯が覗き、眉をハの字に曲げて双眸を瞠り「ムカデさまは蝶々がお気に召さんとですか」捕食性の生き物なればこそ昆虫を喰らうものと早合点したのがいけなかった。足りない頭でもそれだけは早々に理解ができ、同時にお供物がなければ薬の対価を支払えないと胸中に焦りが渦巻き始める。ぐるぐると狼狽える内心は表情や態度にあまり出る事はなく、命ぜられることに慣れ過ぎた本能から従順に指を開き蝶を解放し「痛かったやんね、ほんまに堪忍。」しゅんと肩を落として自由に羽ばたく蝶に語り掛け。「お薬が。欲しぃんです」前のめりに目的の単語を提示すると同時に、半歩彼へと距離を詰め。遅れた片足をすすすと引き寄せながら視線を泳がせて「グリフォンさまに、差し上げとうて」薬を使わなくても彼は平気なのかもしれないが、負担を掛けさせるような状況を作ってしまったのは己の過失。そう信じて疑わないまま素直に目的を離す表情は切なげに歪み「起きたらグリフォンさま居らんなっとって。まだ翼も痛いやろに、無理してお仕事行ってもうたかもしれん」言葉にすればするほど、心の奥へ押し込め見ない振りをしていた不安や罪悪感に苛まれ。しかし打ちのめされへこたれて泣き寝入りするほど可愛らしい性根はしておらず、自分より高次な存在への無礼も承知で彼の余った腕に縋りつき「ムカデさまだけが頼りや…」いっぱいいっぱいの胸では紡いだ声の最後は掠れ、確固たる意志を宿す双眸は憂いを含んだ焦りに揺れ、背の高い彼の吸い込まれそうになる瞳をじっと見上げて)
(/こんにちわ、お世話になっております。久々にお時間が合いそうだと喜び勇んでお邪魔致しました、本日も前回の続きから御話させて頂く事は可能でしょうか。)
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