アリスは憂鬱な夢を視る　/　半無登録、指名制　/　NBL　/

＞惣雨介

(美丈夫と口にした彼こそが、正にその言葉に相応しいと素直に抱く。少なくとも草臥れた見目をする自分よりか、性別の垣根をなくしたように柔らかく見える頬もまぁるく開かれる唇も瞳も全てが美しいと素直に感じた。だからこそ、そんな彼が褒める言葉を自分に向けると現実味の無いように思えてならず。言葉に対するリアクションが薄いが為に明確な否定や訂正をすることは無く、表情変化は薄いままほんの少しだけ頭を肩口に寄せて傾けて、卑下するつもりが有るのか無いのかも分からないが"見っとも無い"と言うその単語を否定するための沈黙を数秒ほど作り上げるとゆるく頭を左右に揺らし「そのこ、逃がしてあげようね」と自分に伸ばされる蝶を一瞥"うごうごちらちら”と足先を揺らし逃げようとする蝶の姿に唇を食い締めてだんまりを数秒。再度結び目を解けばゆっくりと開いた唇で促す様に蝶の行方へを示し、その代わりと蛇のように首をもたげると「俺を探してたなんて、どうしたの」と穏やかで丁寧ながらもハキハキとした口調で率直にも自分を探していたその理由を尋ね。早朝ゆえの澄み渡るきりりとした空気が彼と一緒に話す内にじわじわと温くなるのを肌で覚えつつ「誰と一緒にいるアリス？」と同時に気になったのはこんな早い時間に同伴者が見られない現状への疑問、それもこんな森の奥深くにて偶然にも見かけたから良かったもののと心配さえも浮かばせて「もしかして───一人？」見渡せど見渡せど周囲に人の気配は見られない。浮かぶ心配を胸中に落としつつ細めた瞳の隙間を縫うようにちろりと黒目がちの目を覗かせて)