赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>ドードー鳥
(『困ったら白兎の名を使え』と、以前白い兎の彼に言われた事をギリギリで思い出したことはどうやら功を奏したらしい。正直効果の有無について予測する余裕など微塵も無く、口走った名前を聞いて相手がぴたりと動きを止めるその瞬間までは最終手段の実力行使に及ぶ為の心構えに必死になっているという何とも情けない有様だった。しかし、迫力すら感じる色気を纏って接近を試みていた相手が一転退却の姿勢を見せ始めた事でほっとしたのを隠そうともせずに強張っていた肩から力を抜き、「あーもーマジで焦った!」と狭い試着室の天井を見上げつつドキドキで火照った顔やら首回りやらを少しでも冷やそうと手でぱたぱたとあおぐ。相手の口にした白兎への印象は概ね自身のそれと一致しており「知ってる知ってる、ちょー真面目なおじさんだもん。」と、厳格そのものと言った彼の表情を思い返すような素振りと共に頷いた。とは言え、そんな彼のお蔭で何とか助かったのは事実である。帰りに例のケーキでも買って帰ろう、今目の前に居るこの人に買って貰おう、などと勝手に納得してうんうんと頭を動かしていた所で不意に肌に触れた唇の感触を認めれば「っ、ん」と驚きで小さく声が漏れた。幾ら世間知らずでも薄らと色づくそれが何であるかは分かる。「もー!セクハラじゃん!」ぽかぽかと鍵を開ける相手の肩を叩きながらぐぐっとそのまま相手を外へ押しやり、「衣装はこれにする!着替えるから外出てて、次同じ事したらマジ容赦しないかんね!」そう言って再び赤くなりかける顔を隠すようにバタンと扉を閉めて鍵をかけ、「あと、セクハラの罰として可愛い靴持って来て!ピンヒールのやつ!」と、"罰"という都合の好過ぎるワードを持ち出すことで次々に注文を投げつけて)
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