赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>赤の女王
(女王、とは聞いていたが、確かに不思議の国のアリスで女王といえば赤の女王である。名の如く赤に身を包むその人は、色濃く死相が浮かび、それが、それが酷く恐ろしい。呼吸が乱れるのを感じながらも抑える術などとても持たずに、小刻みに揺れる膝が、部屋へ入った直ぐの己と、女王との距離を無作法にも素早く詰める。宛てがわれた椅子を通り越し眼前に立つも、歯の根が合わず、引き攣る喉からは意味をなさない単音が震えながら伸びる手と共に漏らされよう。ご丁寧に自己紹介と気遣いを受けるがそんな事耳に入っているようで十も理解はしちゃいない。「じょ、お…さま…?」見開かれた目は過分に水を湛え、確認のように疑問形が口から漏れる。纏う赤が炎と重なり、思わず助けてと悲鳴をあげる。誰か、この人を助けて、と。炎に巻かれるように見えてか、それともその病身を悼んでか。大丈夫ですか?痛くはないですか?熱いですね、苦しいですね、誰か消防車を早く。狂ったように呟く言葉は敬語を用いた年相応のもの。大声であれば不届き者と引っ立てられそうな所だが、縋り付き呻く言葉はきっと、目の前の御方にしか聞こえないはず。喘ぐような呼吸と共に、ただひたすらとその体を心配して)
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