赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>ルツール
この家に手紙が届くなんて初めてのこと、これだから本物アリスの考える事は理解に苦しむよ。
僕みたいな出来損ないにまで目を向ける、そんな優しさに浸りたいなら良い迷惑だ。
僕は成功アリスも本物アリスも、僕以外の全てが妬ましいんだから。
そうは言っても、君は手紙にあった通り僕の申し出を聞いてはくれないのだろうけれど。
手土産なんか不要だからここに来るな、それが一番の願いであり贈り物だ。
偽善を向けられればより一層僕が惨めになる。
君は僕が君をわからないと言うが、
ドールハウスに入ったことのあるアリスは一人だけだ。
成功アリスの目を盗み、朝日が昇るまでアリスを匿った経験もある一度きり。
その一度きりでもう充分。
君は僕と違う本物の存在なんだから。
深海の底に沈む暇が有るなら、アリスらしく陽の下を歩き回ればいい。
僕は、この手紙が有ればもう必要ない。
いつかのアリス。
君のお節介が、僕に初めて筆を取らせてくれた。
少しの間だとして、この瞬間の僕は確かに生きている。
ありがとう。
手紙なんて書いたことがないんだ、これで合ってる?。(形式的に教えられていた方法にて鳥を呼べば安っぽい紙切れに綴る文章を一瞥した後折りたたみ、同封されていた封筒に閉じる。配達先を待つ鳥に「城に住む、褐色肌のアリスに届けて。髪は短くて前髪を上げてる。そう、本物のアリスだ」届けるべくその人の特徴を教えてはパタパタと羽根を羽ばたかせて鮮やかな青い空へ姿を消す鳥を見送った。)
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